小林克也 ジョン・レノンの名曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ-」を独自に分析
DJ小林克也(79)は80年代から続く音楽番組「ベストヒットUSA」(BS朝日、金曜、深夜0時)に毎週出演し、唯一無二の名調子でヒットチャートを紹介している。今年でデビュー50周年。紹介してきた楽曲やアーティストについて聞こうと「ベストヒットUSA」収録終わりに直撃すると、同世代であるジョン・レノンの曲への理解、ポール・マッカートニーをロンドンで取材した時のエピソードが飛び出した。
-ジョン・レノンのビートルズ時代の曲「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズ」。小林さんが考える創作秘話をお話し下さい。この曲はタイトルの頭文字をとってLSD体験を元に作ったのではとの説がありますね。
ジョンは、自分の子供がダイアモンドを持って空に浮かんでいるルーシーの絵を描いたんだというエピソードを残してますが本当だろうかと。ジョンはそんなことで曲を作らないと思うんです。僕が考えついたのはハルーシーネーション(hallucination)という言葉です。幻覚や妄想という意味の英語です。ルーシーの由来は絶対にこの単語だと思うんです。間違えてるかも分からないですけどね。外国の友人に「ルーシー・イン・ザ・スカイ・ウィズ・ダイアモンズの由来はハルーシーネーションだよね」って聞くと「いいところに気がついたな」って返ってきたりするわけ。
-興味深い。初めて聞く単語です。
ビートルズがあれほど別格になったのは使命感のようなものがあったと思うんです。自分たちは世の中を変えることができるんだと。イギリスのあのころの若い人(※ビートルズのメンバーは1940年から43年生まれ)はアートスクールに通った人が多いんですよ。音楽をやるのに芸術や建築学を勉強したんです。そういう人たちがポップスをやったのは、ポップスは芸術につながるんじゃないかという高い意識を持ったからこそだと思うんです。
-「ベストヒットUSA」でポール・マッカートニーのインタビューをされました。80年の来日公演の際、大麻を所持していたために入国できず送還された後に。
やりました。ロンドンで。ソーホーっていう駅の前にあるビルをポールが持っていてそこで取材しました。逮捕されて日本人に話したいことがあると思って申し込んだんです。
-ポールの印象を。
ポールは自分の興味にひっかかることがあるとすごい乗ってくる人ですね。好奇心を刺激されると飛びついてくる。あと、とても面白い人です。ポールに会ったとき、僕は緊張してるから普通のことしか聞けないわけです。するとポールは場をなごませるために、僕の英語はなまってないのに日本語に似せてなまった発音で答えてちゃかしたりしてきました。おかげでなごみましたね。好奇心の強さで言うと後で聞いたことですが、ポールは車に乗ってて工事の影響で渋滞してると、すぐに車を降りて工事現場を見に行くらしいんです。いま何をやってんのと直接聞きに行ったりするそうです。
-これまで400人ほどのゲストが番組に出演してインタビューされた。今だから言えるちょっと腹が立ったゲストなどは。
腹が立つゲストはあんまりいないですね、不思議なもんで。インタビューの仕事はラジオでもやりました。政治家や、ひげの殿下もいらっしゃった。映画監督や仲代達矢さん、いろいろな方にお会いしました。会う前にこの人は嫌いだ好きだってあるじゃないですか。でも会って話をするうちに最初は低姿勢で聞いていても、興味を持ってどんどん質問すると相手から本音が出る時があるんです。それがあるとこのインタビューはおそらくうまくいってるなって判断できる。するとインタビューした後、嫌いだった人が好きになることが多いんです。
-それはどなたですか。嫌いだった人は。
いやいや。嫌いだった人をね、ほとんど好きになります。例えば政治家で渡辺…今のじゃなくて…。
-ミッチーですか。渡辺美智雄さん。
そうそう。あの人はすっごい頭が良くて、つまんない質問をすると「お前、そんなつまんない質問するなよ」とか言ってくるんです。「お前なんか文化放送かなんかのパーソナリティーやってて普通だったら俺と会える人間じゃないんだよ」とか言われました。こういうのは忘れない。こいつ嫌いだなと思うわけ。憎たらしいなと。でも、よく考えるとそういうことを言える立場の人だしね。そう考えると嫌いにならないです。ぽこーんと打たれたなって気はするんだけど(笑)。
-番組をオンエアで見聞きしてご自分でダメ出しは。
ダメ出しはすごいします。間の取り方が悪いとか欠点がよく見える。だけど言い出すとキリがないですし。一生懸命やってるから伝わってるよなって感じです(笑)。
〈WHO’S WHO〉
小林克也(こばやし・かつや) DJ、俳優、タレント。1941年3月27日生まれ。広島県福山市出身。米軍岩国基地からのラジオ放送を聞いて英語を身につける。慶応大学1年時に通訳試験合格。在学中より司会業も。70年、ラジオ関東(現ラジオ日本)「バブリング・ポップス」で電波デビュー。小林克也&ナンバーワンバンドとしてCD多数。「ベストヒットUSA」の司会を一貫して務める。週末にラジオ3局で計19時間の音楽生番組を担当。熱烈なカープファン。〈ベストヒットUSA〉 1981年にテレビ朝日でスタート。89年でいったん終了。03年にBS朝日で再スタート(金曜、深夜0時)。現在に至る。司会は80年代から一貫して小林克也が務める。ゲスト出演者にポール・マッカートニー、ミック・ジャガーら大物がいる。16日の放送では、新型コロナウイルスによるパンデミック下で発表されたボン・ジョヴィの新曲を小林が解説する。また、最新チャートからBTS(防弾少年団)をピックアップする。