声優・古川登志夫「男女とも“さん”付け。同じ人間、共に学ぶ」青二塾卒業制作で塾長の信念語る
「うる星やつら」の諸星あたる役、「機動戦士ガンダム」のカイ・シデン役などで知られる人気声優の古川登志夫(76)が20日、都内の文化放送で「青山二丁目劇場」(毎週月曜、午後9時~9時30分)で放送される、俳優養成所・青二塾東京校第43期生の卒塾制作ラジオドラマのメディア向け公開収録に参加した。
19年に塾長に就任し、4期目となる教え子たち。「年々レベルは上がっていて、個性的な子が多い。基礎は似たり寄ったりのことをやるわけですけれども、そこから先は画一的ではなく、それを伸ばしてあげられるよう注意していますが、それに応えて半年ぐらいで頭角を現してくるような子がいる」と、手応えを口にした。
自身が脚本、演出を担当した「夢を見ていたジョニー」に向き合う塾生たちに、古川は温かい視線を向けた。塾生によるドラマ放送は3年連続。「まだ素人ですから。それが地上波で放送されるのは、彼らにとって贅沢なこと。こちらもラジオコードに抵触しないレベルのものをつくらないといけないが、よく頑張ってくれました」とねぎらった。
若かりし頃、当たり前だったパワハラ的な指導は厳禁だという。「親しみを込めて呼び捨てをする考えもあるんだろうけど、男女ともに“さん”付けです。ジェンダーの問題もあるので“くん”付けはしません」と話した。「厳しい指導で良い結果が得られないこともありますし、その辺は僕らの時代と全く違いますね。職員を含めて、同じ一対一の人間という、上から教えるというよりも、共に学ぶという感じですね」と心構えを説明した。
青二塾は大阪校と東京校があり1年制。定員60人を大幅に上回る入塾希望者が募る。東京校は今期、55人が3月に卒業を迎える。そのうち3月の審査を経て、例年2~3割がジュニア(研修生)として大手事務所の青二プロに入るという。
指導を通じた学びに関して、古川は「プロは足し算の演技というか、現場で頑張って芸比べのようになりがちなんです」とした上で「彼らは最初できないこともあるんだけど、素直にポンと出してきたものが、ちょうどいい具合になるという、引き算の演技がある。演出をして、指示していくんですが、場合によっては自分たちの考え以上のプラスアルファが出てきて、そちらを優先することもありました」と語った。
塾長として、演技力以上に、人格面の指導に力を入れる。「難しいんですけど、他者に思いを致すということでしょうか」と古川。尊敬する先輩の「ドラゴンボール」孫悟空役の野沢雅子、「宇宙戦艦ヤマト」古代進役の故・富山敬さんから、良い演技者は人格者である信念が生まれた。
「スタジオで周りがベテランばかりだと、若手は緊張するわけです。野沢雅子さんは自分でお茶やコーヒー、お菓子を差し入れして、一番気を使うわけです。野沢雅子さんがあれだけ優しいのだから、下の人たちは意地悪できない。そういう背中を見てきたので、演技巧者というのはまず人間的にも魅力的な人なんだろうというようなことで、人間力を磨くというようなことに力を入れています」。
富山敬さんからも自身の活躍を喜ばれ、番組中での発言を先輩からとがめられた際にフォローを受けた経験があったという。
松野太紀が演出した「スクランブル」を含む卒業制作のラジオドラマ2作品は、同番組で今月30日から2月27日まで、2月13日放送回のぞいて4週に渡ってオンエアされる。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)
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