クールスの佐藤秀光さん死去、記者に語った矢沢永吉、横山剣との秘話 取材時の第一声は「ホリエモン!」
今年でデビュー50周年を迎えたロックンロールバンド「クールス(COOLS)」の創立メンバーでドラマーの佐藤秀光さんが17日に73歳で亡くなった。10年前、当時40周年を記念したライブや音盤発売が続いたバンドのリーダーとして佐藤さんを取材した際のエピソードや貴重な証言を紹介する。
2015年6月、雨の東京・六本木。オールディーズ専門の老舗ライブレストラン出演前のクールスと初対面した。ライブ会場とは別の建物内にある控室。リードギターのジェームス藤木、ボーカルの村山一海、サイドギターのフランクらと談笑していた当時64歳の佐藤さんは記者の顔を見ると、カッと目を見開き、こちらを指差しながら、「ホ、ホ、ホリエモン!」と叫んだ。
記者が「ホリエモンって、あのホリエモンですか?」と問うと、佐藤さんは「そうだよ!よく言われるだろ」と返答。「いえ、そう言われたのは初めてです」「いや、ホリエモンだよ」…。そのまま“似てる似てない問答”が続きそうになったので、「まぁ、それはさておき…」と流れを変えて取材に入った。
クールスは1974年、東京・原宿で当初はバイクチームとして、舘ひろしをリーダー、岩城滉一をサブリーダーとして結成。75年4月13日に東京・日比谷野音で行われた伝説のバンド「キャロル」解散コンサートで会場のガードを務め、その夜、佐藤さんは、舘、藤木と打ち上げの2次会でのセッションに飛び入り参加したことを機に、レコード会社のオファーを受ける。キャロル解散後、ソロとなった矢沢永吉が「五大洋光」のペンネームで作曲したシングル「紫のハイウェイ」で同年9月にバンドとしてデビュー(岩城は脱退)。佐藤さんは77年に脱退した舘に代わり、終生リーダーを務めた。
そんな草創期を踏まえ、佐藤さんは記者に「あの時、永ちゃんと一緒に2次会に行ってなければ今の俺たちはなかったかもしれない。いいタイミングで流れがあった」と振り返った。
「COOLSヒデミツ」名義で15年に出版された佐藤さんの著書「ハングリー★ゴッド」(東京キララ社)には、キャロル解散コンサートを終えた夜、雨の中を矢沢と1本の傘で肩を寄せ合って打ち上げ会場に向かった描写や、同年9月に六本木の喫茶店で矢沢と互いのデビューアルバムを交換して無言でコーヒーをすすった24歳当時の思い出が綴られていた。
また、佐藤さんはクールスRC時代の81-83年に在籍したクレイジーケンバンド・横山剣との逸話も語った。クールスの代表曲の一つ「シンデレラ・リバティ」(81年)の作者でもある横山は10代の頃、都立の定時制高校に通いながら、佐藤さんが経営する店で働き、バンドのボーヤ(スタッフ)として先輩を支えた。佐藤さんは「横山が通った夜学で俺も一緒に授業を受けたことがあるよ。1人だけ、教室にえらい年取ってるヤツがいるわけでさ。若い時の10歳差は相当違うからね」と懐かしんだ。
さらに、横山をハーレーの後ろに乗せて江ノ島に行った時の「ラーメン事件」も披露した。
「ドライブインに入って2人でラーメンを食おうってことになった。横山が丼を2つ、素手で持って席に戻る途中、手が震えだして『熱っ!』と叫んだ瞬間、ラーメンのつゆと麺が丼から飛び出して空中を飛ぶ光景を、俺は生まれて初めて見たね。しかも、そいつが“ベロン”って俺のヘルメットの中に入っちゃったんだから(笑)。ありえないよね。横山は一生懸命に謝ってヘルメットを拭いてくれたけど、ラーメンの臭いはそう簡単に落ちやしない。煮干しの臭いが充満するヘルメットをかぶって東京まで帰ったよ」
最後に、佐藤さんは「今も現役でこうしてやってるってことは大変なもんだと思う。一本気でここまで来た。一本気(イッポンギ)といっても、ここは六本木(ロッポンギ)なわけだけど…」とオヤジギャグをかまして破顔一笑。そして、改めて記者の顔を凝視し、「やっぱり、似てるよ」とオチを付けた。
後にも先にも、自分が実業家の堀江貴文氏に似ていると指摘されたのは佐藤さんだけだ。そもそも、「◯◯に似ている」という“見立て”は概ね、その人の主観。ただ、客観的に似ているかどうかは別として、そういう見立てから、「センス」なり「モノの見方」といった個性が垣間見える。佐藤さんの訃報を受け、初対面の第一声「ホリエモン!」と同時にカッと見開いた鋭い眼光が脳裏によみがえった。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
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