草花や虫を描いた絵本画家のクライドルフ、関西初の展覧会
草花や虫、小人、妖精など、小さないきものたちが息づく世界を描いた絵本で知られるエルンスト・クライドルフ(1863~1956)。彼の世界を関西で初めて紹介する展覧会が、7月6日から「伊丹市立美術館」(兵庫県伊丹市)でおこなわれる。
スイスのベルンで生まれ、祖父母が住む東ドイツの農村で少年時代を過ごしたクライドルフは、森や野原で草花や虫を観察し、スケッチするのが大好きな少年だった。画家を志してミュンヘンに移ったが、リトグラフ師として働きながら絵を学ぶ生活を続けるうちに体調を崩し、南バイエルンの街・パルテンキルヘンで静養。
アルプスの大自然で小さないきものたちの世界と再会した彼は、草花や虫を擬人化した絵本『花のメルヘン』を発表し、絵本作家の道を歩み始めた。その後、『くさはらのこびと』『ふゆのはなし』『庭の夢』など数々の絵本を手掛け、20世紀初頭にヨーロッパで花開いた絵本文化の草分けとして評価されている。
世界有数のクライドルフ作品を所蔵する「小さな絵本美術館」(長野県岡谷市)の協力のもと開催される本展では、絵本を中心とする貴重な作品資料約200点を展示する。かつてリトグラフ師だったクライドルフが手掛けた挿絵(主に石版画)は、多色刷りの透明感ある色彩と、精緻な観察に基づく描写がすばらしい。絵本ファンはもちろん、版画ファンにもおすすめの展覧会だ。期間は8月25日まで、料金は一般800円。
文/小吹隆文(美術ライター)
(Lmaga.jp)
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