個性派書店の老舗、京都の三月書房が営業終了。この夏「閉店じゃなくて、週休7日」に

1950年創業。京都の個性派書店の大先輩といえる「三月書房」(京都市中京区)が近く店頭販売を終了する。

一般的な書店と違い、実用書やベストセラーではなく、店主目線で選んだ本だけを扱い、人文、社会科学や、短歌など文芸書の厳選ぶりが独特。戦後の思想家・吉本隆明らも通った逸話もある有名店であり、営業終了の報は新聞記事にもなった。「事件」である。あわてて行ってみた。

三月書房の店内には、カラフルなポップも、ビジネス、生き方本の山も、当然ながらオリジナルトートバッグや雑貨の類もない。一見、古書店のようなのだが、そう見えるのは、ちまたの新刊書店の方が勝手に騒々しい雰囲気になってしまったからだろう。

入口で迎えるのは、カルトコミック作家・つげ義春のポスターに、吉本隆明の写真。棚には、よそで見かけない小規模な出版社の本、自主刊行物もあり、バーゲン本(新価格本)を厳選して並べた、お買い得な本の棚もある。独特の品揃えがおもしろく、さらに絶妙な並び順に誘導されて、次々に手に取りたくなる。これだけ読書欲を刺激する店が「伝説」になるには、まだまだ早い感がある。

現在の店主は、3代目の宍戸立夫さん。新聞記事に「5月の連休明けにも店頭販売を終える」と書かれていたが、「具体的な日は決めていないんです」とのこと。「新聞記事を誤報にするために」(笑)、段階的に営業を減らして、夏ごろに「週休7日」の掲示をあげる予定だ。営業を終了する理由は、後継者がいないこと。

店舗は住居を兼ねていて経費もわずか。経営不振というわけでもないのだが、隠居生活へ移行する準備は、2年ほど前から始めていたという。20年前にいち早くインターネット販売をスタートさせ、書店や出版について、ブログなどでの発信もひんぱんにおこなう。ご隠居とお呼びするのも、まだまだ早すぎる感があるのだが、「安倍政権が言う『生涯現役』、死ぬまで働くなんてイヤじゃないですか?」。なるほど、左翼知識人たちに愛された店のご主人らしいスタンスである。

名残惜しい限りだが、見納めに、三月書房の店内をちょっとご案内。

取材・写真/沢田眉香子

(Lmaga.jp)

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