石田順裕、笑いと涙の引退セレモニー
「ボクシング」(2日、大阪府立体育会館第2競技場)
6月19日に現役引退を表明した元WBA世界スーパーウエルター級暫定王者・石田順裕(39)が、所属したグリーンツダの興行で引退セレモニーを行った。
現役時代に2度対戦し、親交の深い元東洋太平洋&日本王者のクレイジー・タイガー・キム氏(40)と3ラウンドのエキシビションスパー。なぜか円形脱毛症のようなヘアスタイルで登場したキム氏が笑いを誘い、執ようにクリンチされたが真剣モードで打ち合った。
最後のリングを満喫した石田は「完全に人選ミスと思ったけど、クレイジー・キムさんは日本タイトルを2度争って2度敗れた相手。ずっと目標にしてきた人。最後にグローブを合わせられて良かった」と感謝した。
セレモニーでは井岡弘樹西日本協会会長、本石昌也会長らから花束。親交がある芸人「サバンナ」八木はリング上にひざまずき「ブラジルの人聞こえますか?石田選手が引退しますよ」と持ちギャグを披露し、石田を爆笑させた。
「6歳からボクシングを30年以上、やってきた。辞めようかと思うこともあったけど、応援のおかげで続けられた」と感無量の表情で語った。
188センチの長身でファッションモデルもこなしたイケメン。東洋太平洋、日本王者となり34歳だった09年8月、中流級の日本選手では快挙となる世界王座を奪取した。
海外に活躍の場を移した11年4月には、米国ロスで行ったジェームス・カークランド(米国)戦で世界を驚かせた。当時27戦全勝(24KO)の相手から1回に3度ダウンを奪い、TKOで撃破した。
現役を日本で締めるべく指名したのがロンドン五輪金メダリスト・村田諒太(帝拳)。「勝っても負けても、それで終われた」と言うが、対戦を受けてもらえなかった。「すべては村田が誤算」と考え抜いた挙げ句、誰もがあきれる、プロジェクトに打って出る。
38歳にして何とミドル級から4階級も上のヘビー級に転向。20キロも増量し、日本ヘビー級王者・藤本京太郎(角海老宝石)と2度戦った。4月30日、判定で京太郎に連敗し、同王座奪取に失敗。グローブをつるすことを決断した。
「誰も経験できない」15年の波乱のプロ人生に悔いなし。最後は涙を浮かべながら、「バンザーイ!」と絶叫し、両手を広げ、明るくリングを下りた石田。今後は故郷の大阪・寝屋川市でアマチュアジム会長に就任する。五輪選手の育成が目標と言う一方で、「(美人女優の)北川景子と飲み会がしたい」という夢に向かい、第2の人生のスタートを切る。