羽生、恩返しは「ここからがスタート」
2014年2月16日
2011年3月11日14時46分。その瞬間も羽生は氷の上に立っていた。ホームリンクの「アイスリンク仙台」。「氷が波を打つようだった」というすさまじい衝撃に、その場にへたり込み、スケート靴を履いたまま四つんばいで出口を探し、外に出た。すべてのものが倒れ、壊れていく。「もう駄目だと思った」。泣きじゃくり、ぼうぜんと立ち尽くすことしかできなかった。気がつけば、スケーターにとっての「命」といえるスケートの刃は、ボロボロになっていた。
家族と何とか合流できたが、自宅は全壊。4日間避難所で過ごし、その後は全国各地のリンクを転々としながら、練習する日々が続いた。「自分だけスケートをやっていていいのか」。そんな感情が心を支配していった。
迷いを消してくれたのは、1カ月後に神戸で行われたチャリティー演技会だった。同じく震災に見舞われ立ち直った神戸の町に、勇気をもらった。そして自分の演技に、涙を流してくれる観客を見て「スケートをやりたいなと思えた」。
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