【スポーツ】お風呂博士に聞く トップアスリートと入浴方法
トップアスリートからキッズまで幅広いスポーツ選手に“お風呂の入り方”を教えている人物がいる。入浴剤メーカー「バスクリン」広報担当の石川泰弘氏(54)は入浴の効能などを探求する中で、順天堂大学院スポーツ健康科学研究科で運動生理学を学び博士号まで取得した。
“お風呂博士”の異名を持つ石川氏とスポーツ選手の関わりは2011年、バスクリンが日本オリンピック委員会とスポンサー契約を結んだことがきっかけ。同社はアスリート用の炭酸入浴剤「きき湯ファインヒート」を開発。12年ロンドン五輪では史上最多の38個のメダル獲得を陰で支えた。
このときレスリングやトランポリンの代表選手には入浴指導なども行った。のちのリオ五輪で前人未踏の4連覇を達成したレスリング女子の伊調馨が「お風呂の入り方を教わったのは初めて。温度や時間を意識して入りたい」と話したように、コンディショニング作りに役立てた経緯がある。
「スポーツ選手にとって疲労のリカバリーは翌日に向けたトレーニングのうち。それは前日の入浴から始まっているという考え方ですね」と石川氏。
そもそも、スポーツ後の入浴は疲労回復に効果的とされるが、そのメカニズムはどうなっているのか。
石川氏によれば、入浴で体を温めると血管が広がる。血流が促進されるため、食事で摂取した栄養やエネルギーをつくるために使われた酸素などが体中に循環。体内の修復を促すというわけだ。
また体温より少し高い38、39度のぬるめの湯に、10分から15分程度つかると、副交感神経が優位になるため、リラックス効果も得られる。
何より疲労回復の効果は、睡眠とのセットで発揮される。人は体温ががくんと下がったときに眠りモードに入るため、寝る前の1時間半から2時間前に入浴で体温を上げると、落差が大きくなり眠りに入りやすくなる。「疲れを取るということは、眠りの質がよくなるということなんです」。シャワーよりも湯船につかった方が「疲れが取れる」と感じるのも、このため。「お風呂は眠りの準備をする場所でもあるんです」と言う石川氏は「睡眠改善インストラクター」の資格も持っている。
現在もスキージャンプ女子の高梨沙羅やシンクロ、アーチェリー日本代表から柔道のジュニア選手に入浴の効果や入浴剤の特徴を説き、スポーツをする子どもを持つ親や指導者への講演で全国を飛び回っている。
ちなみに入浴時に大量の汗をかいても、カロリーが大量に消費されるわけではなく、体温調節をしているだけで逆に体の水分は失われているという。「汗は体が熱を逃したがっているサイン。そんなときはまず湯船から出てください。また、夏はシャワーで済ませる人も多いですが、寝苦しい夜こそお湯につかった方がよく眠れる。そういった知識を知っているのと知らないのでは大違いです」。スポーツ選手のみならず、快適なコンディション作りへ、入浴の仕方に気を配る必要がありそうだ。(デイリースポーツ・松森茂行)
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