【野球】球団初の二刀流 DeNA・武田の育成プランとは 試行錯誤を重ねて挑戦中 新たな道を切り開く球団ポリシー

 球団史上初めて、投打の二刀流に挑戦しているDeNA・武田陸玖外野手(19)が、待望の1軍舞台に初お目見えした。11日と12日の2日間、広島とのオープン戦(横浜スタジアム)に、それぞれ打者と投手で1試合ずつ出場。あくまで2試合限定での“トライアル参戦”ではあったものの、無限の可能性を感じさせた。球団は、DH制のないセ・リーグでの二刀流という前例を見ないチャレンジを全力で後押ししている。夢の実現へ、その育成プランに迫る。

 数字だけ見れば、ほろ苦い“1軍デビュー”だったかもしれない。11日は試合途中から右翼を守り1打数無安打。翌日は4番手で登板し、初被弾を浴びて敗戦投手となった。だが、2軍に再合流した19歳の顔は、充実感に満ちていた。桑原義行2軍監督(42)は「すごくいい表情をして戻ってきました」と、新たな経験値が加わったことを確信した。

 球団を挙げ、武田の挑戦を全力でサポートしている。山形中央高から2023年度ドラフト3位で入団。高校ジャパンの4番を務めたほどの打撃センスの持ち主であり、一方で、左腕から繰り出す150キロ近い速球には代え難い魅力がある。萩原龍大チーム統括本部長は「二刀流でぜひ勝負してくれ」と前例なき“プロジェクト”に挑む方針を打ち出した。DH制がないセ・リーグでは未知数な部分が多いが、新たな道を切り開くのが球団ポリシーでもある。

 桑原2軍監督は「どちらも捨てがたい素晴らしい才能を持っている。大谷選手の二刀流が成功している前例もありますし、両方追い求める価値があると判断しました」と振り返る。武田本人もその道を希望し、壮大なビジョンは動き出した。

 ノウハウは当然手探りだ。現場での練習方法などのやりくりも試行錯誤の日々だという。同2軍監督は「投手と野手をやるのは人の倍なので、故障リスクが高い。彼の疲労のコントロールをどう持っていくかは課題の一つ」と苦労も明かす。

 そこで、武田の場合、練習は徹底的に「量よりも質」に重きを置く。例えば、振る力を強くするにも、スイング数ではなく、トレーニングでその力をつけ、短い打撃練習の中で質を追求する。投手なら投げる量が限られる中で、出力を上げる方法を模索中だ。

 試合での起用法や運用も検討を重ねている。昨季は5月に左肩を手術しシーズンの大半をリハビリに充てたため、ゲームは今年が実質1年目。「カードごとに投手野手を分けるのか、登板当日に合わせて投手と野手を使い分けるのか。やりながら探っていきたい」とベストな方法を導くためさまざまなプランが挙がっている。イースタン・リーグはDH制のため、当面はそれをうまく使いながらの起用になるだろうが、ゆくゆくは「例えばライトで出ていて救援で出てくる、というのは可能性としてはあるのかなと」と同日の投打での出場も期待される。

 現役時代に投手として入団し、のちに野手転向した石井琢朗野手コーチ(54)は、その挑戦を支えながら、野球人として夢をはせる。「大谷くんの二刀流とは違うような気がする。陸玖の場合は守るので。これが成功すれば本当の二刀流だと僕は思っている」。

 大谷とは異なる“ネクスト二刀流”。武田は「やるならトップレベルを目指せるようにやっていきたい」と誓う。その挑戦は、まだ始まったばかりだ。 (デイリースポーツ・福岡香奈)

 ◆武田陸玖(たけだ・りく)2005年6月6日生まれ、19歳。山形県出身。173センチ、78キロ。左投げ左打ち。投手、外野手。山形中央から23年度ドラフト3位でDeNA入団。新人だった昨季は右肩手術も。イースタンでは出場4試合で打率・167、本塁打と打点なし。

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