第一志望の企業だったのに…“同期とのギャップ”に募る不安 Aさんを襲った“内定ブルー”の正体とは【キャリアカウンセラーが解説】
憧れの第一志望の企業から内定を得たAさんは、晴れやかな表情で内定式を迎えていました。自分と同じような初々しいスーツ姿の同期たちを見て、Aさんの胸は高鳴ります。ただその高揚感は長くは続きませんでした。
全国から会場に集まった同期たちの中には、有名大学出身者や留学経験者、資格保有者など華々しい経歴の持ち主が勢ぞろいしています。Aさんは彼らの経歴と自分の経歴を比べて、徐々に不安が芽生えてきました。社長の挨拶が始まっても、その言葉は耳に入らず、頭の中は自分の将来への不安でいっぱいになっていきました。
内定式が終わり帰宅したAさんは、すぐにパソコンを開き企業の口コミサイトを検索し始めます。そこにはやりがいや福利厚生といったポジティブな内容だけでなく、長時間労働やパワハラの噂といったネガティブな情報も並んでいました。
これらの情報を見たAさんは不安が徐々に強まっていき、最終的には就職活動をやり直すべきか、それとも今の内定に従うべきかを悩んでしまいます。このAさんのように「内定ブルー」に陥る学生は少なくありません。では、なぜ内定後にこのような状態になってしまうのでしょうか。キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞きました。
ー内定ブルーになる背景はなんでしょうか
内定ブルーに陥る学生には大きく分けて2つのパターンがあると考えます。企業そのものには問題はないものの、社会に出るプレッシャーや不安を抱えてしまうパターンと、企業に対してネガティブな感情を抱くパターンのふたつです。
前者の場合は、学生から社会人に立場が変わることへの不安や、失う自由に対する喪失感などが原因です。第一志望から内定を得たことで燃え尽き症候群になる学生もいます。
後者は、納得いくまで就活をやっていない学生に多いパターンです。特に早期に内定をもらった学生が、同級生が就活をしている姿を見て「この会社でよかったのかな」とブルーになる傾向にあります。
ー内定ブルーを乗り越えるにはどうしたらいいのでしょうか
不安や喪失感から内定ブルーになる前者のケースでは、心理学的アプローチが有効だと考えます。学生に寄り添って不安の理由を掘り下げて、本当にその不安が存在するのかを丁寧に紐解いていきます。学生自身が認知の歪みに気が付けば、不安が解消され前を向けるようになっていきます。
後者の学生に対しては、場合によっては就職活動をやり直すのも手です。自己分析や業界分析をやり直し、とことん就職活動をやるのもいいでしょう。就職活動のやり直しが難しい場合でも、改めて自己分析や業界分析をおこない、自身がその会社で働く目的を明確化するのがおすすめです。
就職は人生の一大転機なので、内定ブルーになるのも珍しくありません。必要に応じてキャリアカウンセラーに相談するなどして、適切に処置しましょう。
◆七野綾音(しちの・あやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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