大砂嵐、試練のラマダン前に連勝発進
「大相撲名古屋場所2日目」(8日、愛知県体育館)
初のアフリカ大陸出身力士で新十両の大砂嵐(21)=大嶽=が、イスラム教徒に課せられるラマダン(断食月)を目前に連勝を飾った。里山(32)=尾上=を豪快に押し出し、試練に向けて弾みをつけた。自身初の綱とりに挑む大関稀勢の里は、小結時天空を難なく上手投げで退け連勝発進。3連覇を狙う白鵬は高安の粘りにてこずるも寄り倒し、日馬富士は豪風を押し出して、両横綱は安泰だった。
大砂嵐が試練を前に連勝スタートを切った。ラマダンに突入するのは、9日の日没以降となった。日中の飲食や喫煙が禁じられ、猛暑の中でも水分の補給が原則許されない。イスラム教徒にとっては神聖な義務。場所への影響を問われても、早口で「大丈夫」と言い切った。
ベンチプレスで180キロを軽々持ち上げる怪力を発揮した。業師の里山に潜られて頭をつけられたが、左上手を取り、右をねじ込んでかいなを返し、相手を完全に崩しながら寄り出て、最後は押し出した。「突き放したかった。でも大丈夫だった」と胸を張り、連勝にも「あと13日ある」と、ぎこちない日本語で気を引き締めた。
怪力だけでなく、研究熱心な面もある。対戦前は相手の映像を見ながら作戦を立てる。初日に勝った鬼嵐には、場所前の稽古で一緒になった際に出し投げに苦しんだ。だが本場所では出し投げに対し、腰をタイミング良く寄せて威力を半減させ、勝機をつくった。
三段目だった昨年の名古屋場所。ラマダンは7番目の取組のみが重なった。今年とは疲労度は桁違いだが迷いはない。入門前の故郷エジプトではラマダン中も、角界入りを目指してジムで体を鍛えてきた過去がある。
ラマダン中は日が昇る前に食事を行い、水分はうがい程度で辛抱する方針。「ワタシノ夢ハ横綱デス」と、入門直後に掲げた夢は不変。試練を試練と思わずに乗り越える。