稀勢、不安1敗 綱とり場所3日目に土
「大相撲名古屋場所3日目」(9日、愛知県体育館)
自身初の綱とりに挑む大関稀勢の里は、平幕の栃煌山に突き落とされ、序盤戦で痛恨の黒星を喫した。13勝以上の優勝を昇進条件とした北の湖理事長(60)=元横綱=は不安を口にし、昇進へ黄信号がともった。横綱は白鵬が無敗を守ったものの、日馬富士は高安に上手ひねりで敗れ金星を配給した。
痛すぎる黒星。それでも稀勢の里は、胸を張って支度部屋に戻ってきた。「よいしょ」と声を出して腰を下ろし、取材を終えると、再び「よいしょ」と立ち上がった。気落ちした姿だけは見せないよう、懸命に前を向いているようだった。
ただ、惜敗ではなかった。立ち合いの圧力が不十分で、左をおっつけながら前に出たがつかまえられず、頭を下げて右をのぞかせたところで、右に動かれると体勢を崩して転がった。
稀勢の里は「攻めきれなかった。切り替えて、また明日頑張ります」と言葉を絞り出した。今月1日に春日野部屋へ出稽古した際、差し負け続けて栃煌山に7勝11敗と苦戦。この日は13勝した先場所に開花した左差しを封印したが、苦手意識は払しょくできなかった。
北の湖理事長(元横綱)は「足が地に着いていない。前半が大切。ここでの1敗は苦しい。内容がいまひとつ。立ち合いで左足が流れている」と苦言を呈した。白鵬は「前に見えないものがたくさんあるからね」と、重圧の大きさを指摘した。
早くも窮地に陥った。それでも引き揚げる際は、弟弟子の高安が日馬富士から金星を挙げた取組を支度部屋のテレビで確認。左下手を取った瞬間には「入った。よし」と興奮して声を出した。弟弟子の奮闘に刺激を受けた。弱気になっている暇はない。それは大関自身が一番分かっているはずだ。