福留V撃!西岡&呉不在の窮地救った

 「DeNA2-4阪神」(23日、横浜)

 頼もしき5番打者が、チームの窮地を救った。阪神・福留孝介外野手(38)が延長十回に決勝の中前2点適時打を放ち、首位・DeNAを振り切った。西岡剛内野手(30)が右肘屈筋の筋挫傷で出場選手登録を抹消され、呉昇桓投手(32)が体調不良で登板できない苦境をベテランの一撃ではねのけて、虎が勝利をつかみ取った。

 窮地を救ったのは、数多(あまた)の修羅場をくぐり抜けた男の一打だ。前夜の敗戦、西岡の離脱、孤軍奮闘のエース-。グラウンドに漂う重苦しい空気。福留はすべてを背負い、すべてを一振りで打ち消して見せた。

 「能見がマウンドで頑張っていたので、チームメートとして何とか助けたい。その気持ちだけだった」

 場面は同点で迎えた延長十回。前打者・荒木が、この回3個目となる四球を選び2死満塁の好機を得て、打席に背番号「8」がゆっくりと歩を進める。

 「四球、四球でのチャンスだったので、向こうは心理的にストライクを取りたいと思っている。待つ必要はない。最初からドンドンいこうと思っていた」

 安部が投じた外角のシュートを一閃(せん)。打球は中前へと抜けていき、虎党の歓声が支配する中で2者が生還。福留の読みと執念が、勝利を決定づける大きな2点をつかみ取った。

 苦しい展開だった。初回に1点を先制するも、先発・能見が三回に同点とされ、前夜にサヨナラ勝ちを収めているDeNAが押し気味に試合を進める。その中で、援護を信じて投げ続けるエースの背中。「何とか勝ち星をつけてあげたい」。イニングを重ねるごとに思いを強くしていた。

 3打席凡退で迎えた同点の九回無死三塁では、一時勝ち越しとなる左犠飛。だが、この試合で体調不良の守護神・呉昇桓を欠く状況下、九回裏に能見が再び同点とされていた。

 どこまでも逆風が吹き荒れていただけに、福留がもたらした1勝の価値は計り知れない。ヒーローインタビューでは「調子?その日によりけりなので。下がってはないと思います」ととぼけ、ファンの笑いを誘った福留。だが、西岡、呉昇桓の不在を全員で埋めた勝利を喜ばないはずがない。

 「全員が全員、いつもいるわけじゃない。いるメンバーでどれだけカバーできるかだと思う」。本来の戦いにはほど遠い。それでも猛虎には無類の勝負強さを誇る福留がいる。全員で、1歩ずつ。その先の栄光を信じて進むだけだ。

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