上本 完全復活1号 初球狙い打ち同点撃 左膝手術乗り越え無双男が帰ってきた
「阪神2-1DeNA」(3日、甲子園球場)
4万6552人のスタンドが、一瞬の無音状態と化した。放物線を描く白球がゆっくり、左翼スタンドに進んでいく。着弾と同時に沸きに沸く聖地・甲子園。殊勲の阪神・上本博紀内野手は足早にダイヤモンドを駆けた。西を、チームを救った起死回生の同点弾。待望の今季1号が、延長での劇的サヨナラ勝利につながった。
4月28日・中日戦以来の先発出場。1点差の六回だ。DeNAの先発・阪口に五回まで2安打無得点に抑えられ、国吉に代わった直後。先頭の上本は「いつも狙っている」という初球、147キロの直球をフルスイングした。速球を捉えた今季1号は昨年5月1日のDeNA戦以来、367日ぶり。悪夢を振り払う一発となった。
「復帰して一番苦労したのが目でした。ボールのスピードになかなか付いていけなかった」。昨年5月5日の中日戦。二盗を試みた際、左膝前十字靭帯(じんたい)を損傷した。3試合連続猛打賞と無双を誇る中での負傷。再建手術を受け、シーズンを棒に振った。全力プレーの代償だが、離脱とともにチームは低迷した。
リハビリで故障箇所は万全な状態に戻った。ただ1年近いブランクで、プロのスピードに慣れるまで時間を要した。動体視力を回復させるために「いろいろ試した」とメガネを試したり、専門医に相談するなど試行錯誤の繰り返しだった。ケガから間もなく1年。速球を振り抜いた一発は、完全復活を告げる合図にもなった。
矢野監督がベンチを飛び出して迎える。国内FA権を持ちながらリハビリに専念していた昨オフ、就任直後に慰留され、熱い思いに応えて残留を決めた。「どうしても勝ちたい」。感謝は結果で示すと決めている。サヨナラの喜び一瞬に、足早にグラウンドを後にした。「明日はまた明日」。頼れる男が帰ってきた。上本博紀が帰ってきた。
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