週刊誌から“狙われる”球団
【11月11日】
突然、週刊誌の記者から電話がかかってきたことがある。「デイリースポーツの吉田さんの携帯でよろしいでしょうか?」。面識のない方だったので、「どなたから携帯番号を聞いたのか」と尋ねると、出どころをはっきりと伝えてきた。何でも、金本知憲の人となりを記事にしたいという。7~8年前、鉄人晩年のころである。
誌面掲載にあたり、3つ条件を出させてもらった。まず当方の名前、社名を載せてほしい。「あるスポーツ紙記者」と匿名にするなら応じられないとし、もう1点は必ず校了前にゲラを見せてもらいたい旨も伝えた。そして3点目は金本本人の了承を得ること。
だったら結構…そういって電話を切られるかと思ったら「分かりました」と。意図も伝わってきたので取材に応じ、誌面化された。
週刊誌はフェイク、大げさ。昔からそんな風評は確かにあるけれど、例えば政治家の汚職を暴くときなんかは、しかるべき裏取りを済ませ、相応の覚悟で掲載しなければ、出版の存続に関わる。ネタの影響力がデカいほど、その社の編集者は勝負に出ているわけだ。
一方で、悲しいかな…プロ野球関連の記事においては、事実とかけ離れているものがちょくちょくある(毎日現場にいる担当記者はそれが真か偽りか判断できる)。
では、なぜウソが載ることがあるのか。構造はシンプル。それが全てではないけれど、事実でないことを事実であるかのように喋る〈専門家〉がいるからである。そういう意味では、週刊誌も“被害者”になることがあるのだ。
なぜこんな話を書くかといえば実は昨日、旧知の一般紙記者のもとへ、ある週刊誌から取材依頼があったと聞いたからだ。「先の阪神の内輪騒動について喋ってほしい」と依頼されたそうだが、その記者は「内情を詳しく知らないので」と、お断りしたという。
今回の一件〈お家騒動〉で阪神は猛省が必要である。僕の知る限り、内情を知るメディアの人間は100%そう感じている。だけどかといって不毛な詮索記事を読みたいとは思っていないので、無責任な〈専門家〉が臆測で情報を垂れ流さないことを願う。
週刊誌もウェブ版が増えてきたし、ネット、SNSの書き込みで情報が氾濫する時代。不確かなものであれ、読んだ者はそれが真だと信じてしまうので罪が深い。その昔、金本知憲にまつわる記事でも驚くほど事実と逆のことが掲載され、当時の担当記者らの間で言葉を失ったことがある。巨人、阪神など伝統球団はどうしても〈標的〉になりやすい。だからこそ、ファンの方には宙に浮いた情報に惑わされないでもらいたいし、こちら伝える側も取材を続けたい。
「いつ安芸へ?」。世話になる高知の割烹の女将から連絡をもらった。実は最近、カープ新井貴浩引退関連の取材で駈けまわっておりまして…。新井のご家族、恩人に(秘)話を教えていただくと、もう漫画の世界。今月末には波瀾万丈その真実をご紹介できると思うので、お楽しみに。=敬称略=