球児の古巣が遺した幸運
【3月9日】
七回はラッキーなイニングなのか?ホームゲームでいえば「ラッキー7」は裏の攻撃を指していう。つまり甲子園の七回裏は得点が入りやすく逆転も期待できる。そういわれるけれど…。
データを見てみると、少なくとも昨シーズンに限っては、七回の攻撃は、年間を通して「ラッキーなイニング」とまでは言えなかった。阪神の得点、つまり、選手がホームを踏むシーンを一番間近で見ていた人に聞いてみた。
「七回の攻撃?ラッキー7といいますけど、去年は早く終わっていたイメージがありますね…」
昨年まで三塁コーチを担っていた藤本敦士。新政権の総合コーチである。
藤本の「イメージ通り」なのは実は「敗戦&引き分け試合」の「七回」。イニング別の得点を見れば、ワースト2位。計9得点で「九回」(=計5得点)とともに一ケタだった。
藤本に限らず、やはり指導者はビハインドゲームのほうが胸に刻まれるものだけど、よくよく考えれば当然。昨シーズンのイニングデータをそのまま伝えると、藤本は「相手もセットアッパーとか出てきますからね…」。終盤で劣勢となれば、そりゃそうか。
もうひとつ、藤本に聞いてみた。
じゃ、昨シーズン、序盤で得点が少なかったイニングは?
「序盤…。二回じゃないかな…」
大正解。「二回」は計49得点で「九回」(=27得点)、八回(=42得点)についで少ない。三塁コーチのイメージは大方当たっている。
じゃ、阪神の総得点(485)のうち、昨シーズン最も得点したイニングは?
答えは「六回」で計77得点。勝ち試合に限っても計57得点でトップ。つまり、年間を通していうならば、24年は「ラッキー6」だったというわけだ。
さて、25年初の阪神-巨人戦、その「ラッキー7」は球団にとって「実証実験」のイニングでもあった。
7点を追う七回、大山悠輔、前川右京の連打で、虎カラーの風船を飛ばしたばかりのスタンドは盛り上がった。
1点を返したが、序盤のビハインド、とくに三回の5失点がこたえた。ちなみに、昨年の敗戦&引き明け試合で最も失点したイニングは三回だった。これは藤本に聞いていないけれど…。
それにしても6年ぶりに舞ったジェット風船は壮観だった。ただ、ファンが楽しめればそれでいい…というわけにはいかない。今年と言わず、できれば藤川阪神は七回をずっと「ラッキー7」にしてもらえれば…。
もともと、その語源は藤川球児が所属したMLBシカゴ・カブスの前身=シカゴ・ホワイトストッキングス(1876年~1889年)の逸話に端を発するといわれる。今から140年前の1885年、優勝がかかった試合の七回に同軍の打者が打ち上げた飛球が強風にあおられ本塁打になり、劇的に優勝を決めた。このゲームの勝利投手が「Lucky Seventh」と語ったことから七回は幸運のイニングと呼ばれるように。漫画のような伝説だけど、あやかりたい。=敬称略=
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