幸せを運ぶオーキッド

 【4月5日】

 阿部慎之助から白い胡蝶蘭が届いていた。もちろんウチにじゃない。巨人が関西遠征の定宿にする芦屋市内のホテルに…である。実はここ僕の生活圏で、1階のカフェをよく利用する。

 って、こっちの話はどうでもいい。G党なら誰もが知る老舗は戦後間もなく神戸牛が売りの旅館から始まり、来年80周年を迎える。ミスター長嶋茂雄も愛した歴史ある宿だけど、なぜ、今ごろ阿部が花を贈ったのか。

 聞けば、同ホテルブランドのカフェが先月「グラングリーン大阪」に新装オープンしたのだとか。今回のGT戦を前に仕事でこのカフェを利用させてもらったので、ホテルの方に許可を得て阿部贈呈の蘭を撮らせてもらった。

 蘭。英語でオーキッド(orchid)という。連想ゲームになってしまうが、「ホテル」「蘭」といえば虎ノ門の「オークラ東京」が頭に浮かぶ。ここのダイニングキッチンの名が「オーキッド」。取材で何度かお世話になった。なぜ「蘭」なのか、そこまでは知らないけれど、かつて星野仙一が定宿にし、舌鼓を打った場所であることは知っている。そして、もう一つ…

 「巨人の監督をやってもらいたい」

 阪神SD(シニアディレクター)時代の星野が球界のドン渡辺恒雄から口説かれたホテルがオークラだったことも、後に聞いて知っている。掟破りの擁立は結局実らなかったわけだけど、もし、星野が渡辺のラブコールに応えていれば「伝統の一戦」はその後どんな歴史を刻んでいたのだろうか。

 さて、東京ドームはG倒に燃えた闘将の魂が第36代監督に乗り移ったように見えた。藤川球児がベンチを飛び出したのは七回だ。前川右京が高梨雄平から死球を受けると、何やらつぶやき険しい形相になった。考えて動く、というよりも、闘争心で勝手に体が…。球児を見ているとそんなふうに映る。

 思い返せば、02年。星野は阪神監督就任初の巨人戦で失神寸前だった。試合中体調不良でフラフラになり、3--1の六回にベンチ裏のトレーナー室へ運ばれ、暫くベッドで横になっていたほどだ。最後は完投の井川慶と抱き合ったが、誰かに寄りかからなければ立っていられなかったとも聞いた。

 この日もスコアは終盤まで3-1で進んだ。2点リードのまま迎えた八回に佐藤輝明が2本目の本塁打をレフトへ放りこんで3点差。前夜は木浪聖也の走者一掃の二塁打でそれこそ闘将ばりに拳を握った球児だったが、この狭い球場ではまだ…そんな心中だっただろうか。大きくうなずき、ポーカーフェースでフィールドを見つめていた。

 球児は試合後の会見で言った。

 「明日は門別が素晴らしい投球をしてくれることを願いながら、ゆっくり寝たいと思います」

 胡蝶蘭の花言葉は、その可憐さから蝶が舞う姿に例えられ「幸せが舞い込んでくる」。その鉢植えは飛んできた「幸福が根付く」とされる。週明け、開幕する甲子園のエントランスにお祝いの花が並ぶ。門出を寿く白い蘭の待つ聖地へ、もうひとつ勝って帰ろう。=敬称略=

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