楽天を電撃退団の田中将大 “師匠”佐藤義則氏が語る今後の可能性 ダルビッシュとの違いも指摘
日米通算197勝の田中将大投手(36)が楽天を退団し、現役続行の道を探っている。球団から来季年俸について野球協約の減額制限を大幅に超えるダウン提示を受け、自由契約となることを申し入れた。楽天コーチ時代に田中を指導した“育ての親”デイリースポーツ評論家の佐藤義則氏が今回の電撃退団や、もう一人の教え子、パドレスのダルビッシュとの違いについて語った。
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日米通算200勝にあと3勝に迫っている中での楽天退団に、佐藤氏は「田中は楽天を球団初の日本一に導いた一番の功労者だけに、楽天で200勝を達成してほしかった。本人もそうだし、ファンも願っていたはず。こういう結果になって本当に残念」と語る。
今季の推定年俸は2億6000万円。しかし、昨年10月に右肘のクリーニング手術を受けた影響もあり、1軍登板はわずか1試合。来季の契約交渉の過程で球団から野球協約の減額制限を超える大幅なダウン提示を受けた。「今季の成績では大きく下げられるのは仕方がない」と佐藤氏。田中は退団の理由について「金額が問題ではない」とした上で、球団との話し合いの中で「個人的には実質、居場所がないんじゃないかと受け取った」と説明した。
今後、焦点となるのが、新たに田中と契約を結ぼうという球団が出てくるかどうかだが、佐藤氏は「年齢や年俸、今季の成績などを考えると、二の足を踏む球団が多いのではないか」と予想。早々と獲得に否定的な見解を示した球団もあり、取り巻く状況は厳しい。
一方で「本人がまだ1軍で投げられる、勝てると思っているから楽天を退団して他球団でやる道を選んだのだろう」と右腕の胸中を推し量り、「経験のある投手だけに1軍で投げられるチャンスをもらえれば、何勝もというわけにはいかないかもしれないが、勝つことはできる」と断言。「どこの球団でもいいし、年俸も下がってもいい。頭を下げてでも、とにかくユニホームを着ること。そこが一番大事」と現役続行を願った。
21年に日本球界に復帰して以降、成績は下降線をたどっており、衰えは隠せない。佐藤氏は「変化球に頼る投球になってしまっていることが苦しんでいる要因の一つ。やはり基本は真っすぐ。スピードは関係ない。相手に真っすぐで押してくると思わせることで変化球もより生きてくる。配球の問題もあるが、変化球に頼った投球だけではなかなか抑えられない」と近年の投球を分析。復活の鍵に「ストレートの質の向上」を挙げた。
同じく佐藤氏の日本ハムコーチ時代の教え子でもあるパドレスのダルビッシュは今季日米通算200勝を達成した。1988年生まれの田中に対し、1986年生まれのダルビッシュの方が2歳年上だが、衰えは感じさせない。それどころか、投手陣の大黒柱として奮闘する姿からは、まだまだ進化を続けている印象さえ受ける。
現在の2人の違いについて佐藤氏は「技術に頼っている田中に対し、ダルビッシュはまだ体の強さがある。体をしっかり使って投げられているし、腕の振りのスピードもある」と指摘する。右肘手術などもあり、コンディションが万全ではない田中の投球について「スライダーの曲がりが緩くなっているし、フォークの落ちも悪くなっている」と危惧。「手先でかわそうとするのではなく、上体をしっかりと使って腕を強く振ることが大事。腕がしっかり振れれば、もっと球の強さも出てくるし、スピードも出てくる」と話す。
佐藤氏にとって田中はダルビッシュとともに大切な教え子。「来年はぜひ200勝を達成してほしい」。苦境に立たされている田中の身を案じるとともに、新天地での復活を願っている。