【東京へ駆ける・高橋尚子さん(3)】選手たち、そして子どもたちへのメッセージ

 2000年シドニー五輪のマラソンで、日本女子陸上界初の金メダルを獲得した高橋尚子さん(46)が、東京五輪への期待や9月15日に行われる東京五輪マラソン代表選考会「グランドチャンピオンシップ(MGC)」の現段階における展望、あらためて振り返る自身の選手生活についてなど、胸に秘めた思いを語った。

  ◇  ◇

 -ここのところ日本の男子は日本記録が出るなど躍進しているが、理由はどこにあると思うか。

 「個性を伸ばすような取り組みと指導が結果につながってきた印象があります。監督も選手も互いを分かり合いながら、より深く選手の良さを引き出すことに成功したのかなと。科学的な取り組みだったり、暑さ対策だったり、いろいろな角度で選手をサポートするものが増えてきたことも大きいのではないかと思います」

 -今後、各競技で代表選考会が本格化していく。自身の経験からアドバイスがあれば。

 「あと一年、自分の引き出しを持ってほしいですね。私は後半10キロからのスパートが得意でしたが、五輪までのレースでラスト10キロから飛ばしたり、(98年のバンコク)アジア大会ではスタート直後から飛ばしたり、(シドニー五輪の)最終選考会(の名古屋)ではラスト20キロから飛ばしたり…。どこからのスパートが得意なのかを知られなければ、私の作戦を封じられません。自分の成功例として残るし、相手がどこからきても対応できます。臨機応変にできる自信と作戦が、本番に向けてすごく役に立ちました」

 -東京五輪で初めてマラソンを見る子どもたちもいると思う。何をポイントにして見たらいいか。

 「選手がどういうことを考えているのかを想像したり、考えてみると面白いと思います。あまりレースが動かない前半の20キロぐらいまででも、位置取りで選手が何を考えてそこにいるのかが出ます。偶然その場所にいることはありません。前半から予想を立てながら、今考えていること、これからどういう展開になるのか、だれが一番楽そうなのか、一緒に走っているような気持ちで見てみると臨場感が出ます。例えば(アテネ五輪金メダリストの)野口みずきさんは一番左端、歩道側でした。給水の時に転倒したり、コースを替えると危ないからです。何も動かないところでも、いろいろと内に秘めた戦略があると考えてみると、楽しく見られます」

 -レースを生で見るチャンスにもなる。

 「近くで見て、雰囲気を味わうことで、例えば“自分がやっている陸上を頑張ればこの場所に立てるんだ”というように、夢を現実にとらえることができる瞬間になります。ぜひ現場にきて、いずれ自分も、という夢を膨らませてほしいですね」

 -子どもたちへのメッセージを。

 「私は初めから強い選手ではありませんでした。高校時代、(岐阜県代表として出場した)全国都道府県対抗女子駅伝では区間45位も経験しました。夢を持ち続けて、一日一日を一瞬一瞬を大切にして過ごすことで、どんどん飛躍していくと思うんです。ぜひ、夢を持って頑張ってほしいです」

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