設楽悠太、五輪に囚われぬ価値観 高らかに「五輪より1億」「大人の作った大会」

再始動戦を終えた設楽悠太=熊谷スポーツ公園陸上競技場
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 「東日本実業団駅伝」(3日、埼玉県庁~熊谷スポーツ文化公園陸上競技場)

 男子マラソン前日本記録保持者の設楽悠太(27)=ホンダ=が、東京五輪代表の残り1枠を争うファイナルチャレンジの懸かる東京マラソン(来年3月)への出場を表明した。ただ、五輪切符よりも日本記録更新でもらえる報奨金1億円に照準。五輪代表権を獲得しても、辞退する可能性を示唆した。

 この日は14位に終わった9月の東京五輪代表選考会・MGC以来の実戦に挑み、3区を区間2位で走破し、チームの2位に貢献した。

 設楽はいつも通り飄々と表明した。「東京マラソン?出ます」。ただ、その瞳が見つめる先は夢舞台ではなかった。「五輪はどうでもいいというか、そっちより1億が欲しい。お金のために走る。MGCは賞金もなかった。今、僕が生きているのは走れているから。走るためにはお金がいる」と清々しいまでにキッパリ言い切った。

 東京五輪まで残り9カ月。注目はどうしても五輪代表残り1枠の争いにいきがちだ。国内選考大会で大迫傑(ナイキ)の持つ日本記録超えの2時間5分49秒を突破した選手が決まり、突破者がいない場合はMGC3位の大迫で決定する。MGCではハイペースの大逃げで玉砕したものの、前日本記録保持者で圧倒的なスピードを誇る設楽はファイナルチャレンジの最有力候補。ただ、独特の感性を持つ27歳は名誉や権威には囚われない。

 日本記録更新で、代表権を得ても辞退する可能性を示唆。「世間の皆さんはたぶん大迫選手が走ってほしいと思う。国際大会の実績もある。彼なら絶対にやってくれるし、彼に任せるなら納得できる」と、大会の盛り上がり、対世界での勝算を考えて大迫に託す可能性に触れた。

 折しもIOCが五輪マラソンの東京から札幌への移転を強行的に決めたばかり。辟易するような“政争”を見せつけられた。その一方でアスリートの中には五輪以外で競技の魅力をアピールできる大会を自ら作っていこうとする動きが出てきている。先日、大迫がスピードに特化した賞金レースを21年に創設することを発表し、設楽も自身のツイッターで支持を表明した。

 この日も「マラソンは花形で夢があっていい種目。子供たちのためにもなる。これからは選手が動いて変えていく時代だと思う。僕も変えていきたいし、楽しみにしててほしい」と話した設楽は、こうも言った。「大人の作った大会を走ってもつまらない」-。この2週間の騒動への皮肉にも聞こえる言葉とともに、一石を投じた。

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