羽生結弦さん 4A挑戦を後押しした「羽生ちゃんこ鍋」コラーゲン&ビタミンCで回復
男子フィギュアスケートで2014年ソチ、18年平昌両五輪を連覇した羽生結弦さん(27)がプロ転向したことを受け、13年夏から9年間、羽生さんの食生活を個別にサポートし続けた食品メーカー「味の素」の栗原秀文さん(46)が28日までにデイリースポーツの取材に応じた。クワッドアクセル(4回転半ジャンプ=4A)への挑戦を援護した“4A飯”に迫った。
21-22年の北京五輪シーズン。4回転半に挑む羽生さんをサポートすべく、栗原さんは食事の“特別プログラム”を組んでいた。
「4Aって、とてつもない衝撃が体全身にくる。着地の時の音が、大太鼓をたたくぐらいのすごい音」。注目したのは体全体の筋肉と骨をつなぐけんへの負担。早い回復のためにも、必要な栄養素はコラーゲンとコラーゲンをより吸収させるビタミンCだと考えた。
そして考案されたのが、“羽生ちゃんこ鍋”だった。鶏手羽や、軟骨入りのつくねだんご、にんじん、水菜などを入れて、必要な栄養素をそろえた。「同一の食材を何回も食べてもらわないといけない」と、飽きがこないようスープの味も複数用意した。
鍋にするメリットもある。「だしのうま味(アミノ酸)は消化吸収を助ける“食欲のスイッチ”の役割を果たします。それに胃や腸は筋肉。温めた方が動きやすく、色んな栄養素も取れる」と栗原さん。サポートし始めの頃から鍋を好む羽生さんは、「染みるー」とうれしそうに食べてきたという。
羽生さんが「死ににいくようなジャンプ」と表現した4回転半は、北京五輪のフリーで転倒こそしたが初認定された。ただ、それは3連覇がかなわなかった舞台でもあった。フリーから2日後、栗原さんは「体が無事でよかったね」と声をかけた。「本当にそうですね」と返ってきた。「それが忘れられない」。一緒に挑戦を見守ってきた栗原さんだからこそ感じた、羽生さんの覚悟があった。
19日、羽生さんは「決意表明」の記者会見を開き、今後はプロに転向することを発表した。命がけで挑んだ4回転半の挑戦は継続する。栗原さんは色んな感情があり、思わず「涙が出てきた」という。
会見翌日に会社にあいさつに訪れた羽生さんには、「結弦くんぽいと思ったけど、すごく複雑で…」と伝えた。「相当疲れてるだろ」(栗原さん)、「くたくたです」(羽生さん)、「ここからの時間は少しほぐれるタイミングだからリラックスしてね」(栗原さん)。優しく声をかけ、羽生さんをねぎらった。
今後、羽生さんは活躍の場を明言してはいないが、栗原さんはサポートを継続していくという。「相変わらず勝負するんだなと。やっぱり羽生結弦だと思いました」。これからも裏方として、誰よりも熱い挑戦を応援し続ける。