「卓球・Ｔリーグ、彩たま３－２東京」（１０日、大田区総合体育館）

　昨季２位の彩たまは、昨季王者の東京に３－２で競り勝った。０－２で迎えた第３試合で、英田理志（あいだ・さとし、２９）が世界ランク５位のウーゴ・カルデラノ（２６）＝ブラジル＝を３－１で破る大金星。そこから第４試合で松平健太が勝利すると、１ゲーム先取のビクトリーマッチにも抜てきされた英田が２０年全日本王者の及川瑞基を撃破し、劇的な逆転勝利で開幕を飾った。

　最新世界ランクで５３０位の男が“史上最大”の下克上をやってのけた。中国勢を除けば、世界ランク４位の張本智和に続くトップ選手であるカルデラノのＴリーグ初見参に注目が集まった一戦。大物外国人に胸を借りた英田は、カット主体ながら変則的なサーブを駆使しつつ、持ち味の攻撃的なプレーも織り交ぜながら相手をほんろう。強気のプレーで先制すると、終盤までペースを握り続けて３－１で押し切った。

　「出だしが大事だと思っていたので勝ててうれしい。カルデラノ選手は世界トップ選手なので負けて元々。気楽に挑戦者の気持ちでプレーできた」

　カルデラノは台風の影響もあって渡航予定が１日遅れ、７日に来日したばかりとあって時差ボケも残るなど本調子ではなかった。それでも、元々全国区ではなかった苦労人が世界的トッププレーヤーを破るという“Ｔリーグドリーム”を体現して見せた。

　英田は鳥取県出身で、中学、高校は公立校の卓球部出身。朝日大、実業団、スウェーデンでのプレーを経て、２７歳でＴリーグデビューした後に２１年全日本選手権で８強入りするなど、飛躍のきっかけをつかんだ。幼少期から海外でも活躍するトップ選手も多い卓球界では異色の経歴で「Ｔリーグに入るまで全国大会でも活躍してなかった」。元プロ野球投手の上原浩治氏のファンであることから背番号「１９」を背負う２９歳は「公立校出身でも周りの卓球エリートの中で活躍できるんだぞと証明したい」と“雑草魂”をのぞかせた。

　パリ五輪代表選考会にも参加しており、夢舞台へのチャンスもある。「選考会に参加していることが考えられなかったこと。たくさん負けてもめげずにやってきたので、これからも頑張りたい」と目を輝かせた。