松尾怜実 亡き師匠を宿すヘルメットとともに

 志半ばで亡くなった師匠の思いを引き継ぐヘルメットを手にする松尾怜実
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 【第172回】松尾怜実(23)=福岡・127期=

 松尾が初めて作ったヘルメットは、昨年11月の宮島で、レース中の事故で他界した、師匠の中田達也選手が使用していたヘルメットのデザインを、そのまま受け継いだ思い入れの深いヘルメット。「ヘルメットの更新を1年間違えてヘルメットを買ってしまったんです。達也さんにカーボンがいいよと言われ、そこからデザインとかを相談していた時にあんな事故に遭って。まさか…。もう何も考えられなくなってしまいました」と師匠の死は、23歳の女の子には本当につらい出来事だった。

 デザインを受け継ぐことになったが、彼女には葛藤もあったようだ。「達也さんの両親から『ぜひ使ってください』と言われ、デザインをそのまま使うことにしましたが、本当に自分なんかが使ってもいいのだろうか。まだ何にもできていないのに…。でも達也さんの弟子になって2年。少しでも一緒に走っていたかったし、達也さんも見守ってくれていると思い、使わせてもらうことにしました」と思いを話してくれた。

 レース場でも力をもらっている。「1着を取った時はこの景色を天国から見てくれているかなとか、失敗したら『もっとこうだろう』とか言っているんだろうな。でも少しでも着順を取った方が喜んでくれると思うし、自分が輝けば、見つけてくれると思う。達也さんは事故がなければ、G1やSGで活躍していたと思う。達也さんの両親もすごく応援してくれているし早く近づけるように頑張りたいです」。志半ばで亡くなった師匠の思いを、同じヘルメットをかぶる彼女が、今度はかなえていくだろう。

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