【芸能】日活ロマンポルノ復活に2つの勝算 「女性受け」と「原作もの時代の反動」

復活第一作目となる「ジムノペディに乱れる」の芦那すみれ(左)と板尾創路
2枚

 生誕45周年を迎えた日活ロマンポルノが、26日の「ジムノペディに乱れる」から28年ぶりに復活する。さまざまな逆風にさらされながら、一時代を築いた成人映画レーベルの金字塔。なぜ今、リブート(再始動)するのか。新作誕生の過程を日活に聞くと、そこには2つの勝算があった。

 1つは「再評価のうねり」だ。特に女性も楽しめる作品群として認識されるようになったのが大きい。

 日活ロマンポルノは、1971(昭和46)年11月に第1作「団地妻 昼下がりの情事」を封切り、産声を上げた。当時は日活の経営が傾いており、低予算かつ動員の見込めるピンク映画に参入しようと始まった企画だった。

 1988(昭和63)年までの17年間で約1100本を製作。当初は男性向けだった作風も時代とともにバリエーションを生み、エロスと作家性が融合した作品は2000年代に入って再評価されることになる。

 イメージ戦略も文化感度の高い女性向けに転換し、復刻の特集上映を開催するたびに若い女性たちが劇場に駆けつける現象を生んだ。「日活ロマンポルノ」のプロジェクトリーダーを務める高木希世江さんは「女性で、しかも大学生くらいの若い客層へと変わっていった」と明かす。中には橋本愛(20)のように自らその魅力を発信する女優も現れた。

 レーベルのさらなる価値向上に向けて、リブートの企画を立ち上げたのは主に女性社員。2012(平成24)年の日活100周年から構想が生まれ、14(平成26)年末から本格的に始動した。脚本作りの段階から女性の観客を意識して製作しているという。

 2つ目は「原作もの映画が大量生産される時代への反動」だ。

 ぬれ場が欠かせないため、最も高い壁は魅力ある女優のキャスティング。リブート作品のプロデューサー西尾沙織さんは「この人なら『脱ぎます』と言っていただけるような実績のある監督が必要だった」と説明する。品質保証として、新作5作品には行定勲、園子温ら人気監督の名前が並んだ。

 著名監督が決まらなければ難航しそうな第一の関門だったが、オファーすると、すんなり快諾してくれたという。リブート作品は、かつてと同じように、「10分に1回のぬれ場」「上映時間80分程度」などの製作条件はあるものの、その他は自由。漫画や小説の原作もの全盛の時代に、ルールの範囲内であれば何でもアリなオリジナル作品が上映できることは、飢餓感を抱えた監督たちを大いに刺激した。西尾さんによると、ほぼ全員が「また撮りたい」と再登板を望んでいるという。

 (1)「ポルノ」という言葉のイメージを超え、男女問わぬ娯楽作品として市民権を得た時代の流れ。(2)著名監督たちが積極的に参加したいと思える、現在では貴重な製作環境。

 2点の化学反応によって、新作5作品には妖艶かつ新鮮で等身大なヒロインたちが集結した。監督たちの個性も爆発。時代感が投影され、ロマンポルノの枠組みを拡張するかのような現代ならではの作品が連なった。

 興行の行く末はこれからとなるが、5年後の50周年に向けて第2、第3弾の計画も進行中。西尾さんは「今回よりも若い世代の監督や女性監督、海外の監督はどうか、などいろいろ考えています。(韓国の鬼才)キム・ギドク監督は今回はスケジュールの都合でダメでしたが、撮りたいとおっしゃってくれている1人です。次の世代に向けて、新作を作ることでロマンポルノの価値を広げていきたい」と“第2の黄金時代”を見据えている。

(デイリースポーツ 古宮正崇)

 「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」作品一覧

 (1)行定勲監督「ジムノペディに乱れる」(26日公開)

 (2)塩田明彦監督「風に濡れた女」(12月17日公開)

 (3)白石和彌監督「牝猫たち」(来年1月14日公開)

 (4)園子温監督「アンチポルノ」(来年1月28日公開)

 (5)中田秀夫監督「ホワイトリリー」(来年2月11日公開)

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