【野球】阪神最後のドラフト外選手がGMとして新たな船出 若虎時代は「相当悪ガキでした」 NPBで13年の星野おさむ氏
阪神、近鉄、楽天で内野のユーティリティープレーヤーとして活躍した星野おさむ氏(54)。ドラフト外からの入団で13年にわたり1軍でプレーし、2004年に消滅した近鉄では最後のサヨナラ打を放った打者として名を残した。引退後は楽天コーチ、四国IL・愛媛の監督などを歴任し、今年から独立リーグ、千葉スカイセイラーズ(船橋市)のGMに就任した。BCリーグ本加盟を目指すチームのGMとしての思い、自身の礎となっている阪神時代について語った。
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チームのロゴ入りパーカを着た星野GMは、試合中、バックネット裏からグラウンドや客席に忙しく視線を送っていた。
選手の動きはもちろん、観客の入りにも目を配り、顔なじみの観客と言葉を交わす。ホームゲームでの練習では、ユニホームを着て青野毅監督(元ロッテ)をサポートするのも日課だ。
名刺に記されている肩書は千葉スカイセイラーズのGM兼事業統括本部長。22年に立ち上げされたチームは、今季から国内最大の独立リーグ、BCリーグに準加盟し、2026年の本加盟を目指してシーズンを迎える。
埼玉県出身の星野さんは、現役時代も指導者となって以降も千葉とは縁がなかったが、独立リーグの愛媛、埼玉、福島での指導者、チームマネージメントなどの経験を買われて、新興球団に招聘された。
「千葉と埼玉ってあまり交流がなくて、全く知らないところなんですけど勉強しながら、覚悟を持ってやってます」
自身の仕事については「チーム強化の編成をやったり、渉外担当だったり。いろんな人に会いに行くことが営業につながったり。チームのことを広めていくことですね」と説明する。
今後の球団のあり方を問うと「やっぱり上を目指す集団であるといいし、意識のある人が野球ができる現場でありたいと思います」と理想を掲げた。
多くのチームに在籍し、多くの指導者と出会ってきたことが星野さんの糧となっている。中でも、阪神では選手としてのみならず、社会人としての基本をたたき込まれたという。
「僕らの時代、阪神は弱かったけど、いいしつけをしてもらったと思ってるんです。価値観だったり、プライドだったり、言葉遣いもそう。だから、その価値観はこれからの基準にしたい」
阪神には高校卒業後の88年にドラフト外で入団。チームでは最後のドラフト外世代となった。入団後は、甲子園球場の東側にあった虎風荘で寮生活を送り、5年後の93年4月に1軍初出場を果たした。
「多分、世間的にはそうでもなかったと思うんですけど、僕と亀山(努)さん、古里(泰隆)は相当悪ガキだったんで毎日怒られてました。亀山さんは僕の1個上のドラフト外で一番仲が良かった。『俺らはドラフト外なんだから』って言い訳をしながらウダウダやってましたね」
同世代の仲間たちの名前を挙げて懐かしみ、反省を口にした。
「寮長だった梅本(正之)さんは理不尽に怒る人じゃなかったんで、どう考えてもこっちが悪かったんでしょうね。言葉遣いも敬語が苦手だったので(2軍コーチだった)永尾泰憲さんからこんこんと教えられました」
甲子園の“神整備”で知られる阪神園芸のスタッフからは、職場であるグラウンドを大事にすることも学んだ。
「園芸さんに一番教わったのはキャンプの時。一日中ノック受けて、一緒にグラウンドをならして、トンボのかけ方を細かく教えてもらって。よく怒られて、かわいがってもらいました」
指導者となって以降、プロ入り当時の自分を顧みて、選手たちに伝えてきたことがある。
「自分は志が小さかったというか。プロに入った時考えたのが『1番・ショート星野』で出ることだった。実現したんですよ、それでホッとしちゃった記憶がある。大谷(翔平)選手みたいな具体的なものは何も考えてなかったので、キャリアや目標設定をちゃんと設定するんだよ、と言ってきました。プロに行かなくても、それができるとしっかり社会で活躍してますから」
13年のプロ生活では2度の戦力外を受け、所属球団の近鉄が消滅する悲哀も味わった。「クビになるとか思ってない時に解雇になったり、球団がなくなったりとか、いろんなことがいい経験になっています」。そう述懐する。
自身のさまざまな経験を踏まえての新たな船出。「しっかり編成をやって、選手に頑張ってもらって。チームが(BCリーグに)加盟できたら話題になるし、入団を希望してくる選手の水準も上がると思うんです。まだ、緊張感がないけど、シーズンに入ったらまた変わると思いますよ」
切磋琢磨してチーム力が向上していくことを期待した。
(デイリースポーツ・若林みどり)
星野おさむ(ほしの・おさむ)1970年5月4日生まれ。埼玉県出身。埼玉・福岡高から88年にドラフト外で阪神入団。93年4月に1軍初出場。2001年に戦力外となりテストを経て02年に近鉄入団。04年の分配ドラフトで楽天移籍、05年限りで引退。実働13年で738試合、1537打数387安打、打率・252、24本塁打、155打点、27盗塁。06~10年まで楽天コーチ。11年から四国IL愛媛監督、BCリーグ武蔵監督、福島GMなどを歴任し、25年1月に独立リーグ千葉のGMに就任。
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