【野球】大けが解雇の苦労人が古巣で原点回帰 ロッテ戦で4番のヤクルト大松

 “苦労人”が思い出の地に降り立った。ヤクルトの大松尚逸内野手(34)が9日から行われたロッテとの3連戦で、2015年8月9日・ソフトバンク戦以来となる古巣の本拠地(ZOZOマリンスタジアム)でプレーした。

 初戦を「5番・DH」でスタメンコールされると両軍から拍手と歓声。第1打席に立った際には球場のビジョンに涙するロッテファンの姿が映し出された。それを聞いた大松は「本当ですか。うれしいですね」と驚きの表情を隠せなかった。

 昨年5月に右アキレス腱を断裂。同年オフにロッテを自由契約となり、2月にテストを受けヤクルトに入団した。貴重な左の代打として期待される長距離砲は5月9日・広島戦(神宮)の延長十二回。移籍後初本塁打となる代打サヨナラ本塁打で劇勝を呼んだ。お立ち台で「はじめまして。ヤクルトスワローズの大松尚逸です」と神宮のファンにあいさつし、インパクトを残した。

 「振り返ってみれば本当にすごいこと。丸1年前に退院して、松葉杖をついていた。その1年後にビジターとして元本拠地に来られるなんて」。

 1戦目、2戦目で1安打ずつをマークし、迎えた3戦目。交流戦未勝利だったチームは大幅な打順変更を行った。杉村チーフ打撃コーチが「勝負強い打者」と期待を込めたのが「4番・一塁、大松」だった。「ああいう打順を打たせてもらって、何とも言えない気持ち。意気に感じました」。無安打に終わったものの、ベンチでは声を張り上げ士気を高めた。

 「声だけで試合の流れが変わることもある。威圧感だったり、相手へプレッシャーを与えられる。連敗中に、チーム全体で声を出すこと、その大切さを知ることができた」。苦しい状況の中でも決して下を向くことはなかった。

 元チームメートとの再会も力に変えた。「監督、コーチ、選手全員から元気をもらった。走っている姿を見て心配されて、ドキドキしたと言われて。いい思い出です」と笑ってのけた。

 “原点回帰”した男が、新天地でさらにその打棒を発揮し続ける。(デイリースポーツ・疋田有佳里)

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