【大相撲】なぜ?110年ぶり新入幕V尊富士の強さの理由 スピード相撲の達人・朝日山親方&中村親方が同じポイント挙げる

 歴史に残る新入幕Vで春場所の主役となった尊富士。ほとんどの取組が速攻で勝負をつける快進撃だった。いきなり幕内の土俵を席巻した強さの理由とは。現役時代に抜群のスピードを生かした相撲でファンをうならせた朝日山親方(元関脇琴錦)や中村親方(元関脇嘉風)からは、同じポイントが挙がった。

 尊富士は速攻で白星を積み上げた。15日間の取組の平均時間は7秒4。10秒以上は遠藤戦と豪ノ山戦の2番だけ(最長12秒5)で、10番が6秒以内。序盤の2日間を除いた13日間では、平均4秒6と5秒を切った。

 親方衆から似たタイプとの声が出たのが、元琴錦の朝日山親方だ。史上初の2度の平幕優勝、三賞18回を獲得した速い取り口は“F1相撲”と称された。同親方は尊富士を自身とは「違うタイプ」としつつ「体の芯が強いから体がぶれない。上体が起きないし、下がり過ぎないから、引かれても持ちこたえる安定感もある。多少軽量の部分も、芯の強さでカバーしているのかな」と分析した。

 そして、目につく長所に挙げたのが「戻りの速さ」。相手に当たってはじいた後、すぐに体勢を戻して二の矢、三の矢の攻めに転じる。それも手先だけでなく「足も出て、全身で前にもっていけている」という。「何にしても一つ一つの動きが速い。これは今の大型化(した力士)は速さについてこられない部分がある」とし、もろ差し狙いだった自身と比較して、あてがって前にもっていく力を「すごいなと思う」と称賛。体の芯の強さと動きの速さを兼ね備えたバランスにうなった。

 スピードあふれる動きを武器にした元嘉風の中村親方からも「体の芯が強いのは確か。絶対にぶれない」と同じ長所が挙がった。その上で、足の幅に注目。太もも裏を使って瞬発力を生かすためには、短距離走のスプリンターのように幅を狭くするのが一般的だが「尊富士は足の幅が広い。それでも踏み込んでいける。セオリーじゃない。型にとらわれないから、相手にすれば嫌」と特徴に言及した。

 尊富士には下半身の細さを指摘する声がある。ただ、中村親方は「中臀(でん)筋とか大臀筋とか、お尻の筋肉はちゃんとついている」とし「そういう意味ではスピードとか、そういうものを含めた圧力。押す角度とかポイントがすごくいいのかな」と見解を述べた。

 184センチ、143キロの尊富士は、今場所の幕内力士の中で身長はほぼ平均、体重は平均より17キロも軽い。体に恵まれているとは言えない若武者が、なぜ偉業を成し遂げることができたのか。体の芯の強さ、素早く次への体勢を整える速さ、スピードを含めた圧力やバランス…。“スピード相撲の達人”である朝日山、中村両親方の分析に、強さの理由が腑(ふ)に落ちた。(デイリースポーツ・藤田昌央)

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