【谷光利昭医師】胃がんに遺伝はなし 治癒の可能性が上昇も定期検査を忘れずに

 【Q】胃癌(がん)は遺伝するのでしょうか?父、母、祖父も胃癌で心配です。

 【A】まず胃癌は遺伝しません。大腸癌の特殊なタイプのものは遺伝しますが、基本的に、癌の遺伝はありません。また胃癌は中高年での発症が多く、若年での発症は非常にまれです。最近、20代前半の人気歌手が胃癌であることを公表し、癌と戦うことを宣言されました。早期の回復を心からお祈り申し上げます。

 胃癌の原因は特定されていませんが、関連事項として最も有名なのが、ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)の胃内への感染です。感染経路の特定は困難で、井戸水、湧き水などに含まれており高齢の感染者の多くはこれが原因ではないかと言われています。

 また、感染した両親、祖父母からの感染も考えられています。ご家族にピロリ菌の感染者がおられた場合は、できるだけ早期に内視鏡検査をうけ、感染の有無を確認することが望ましいです。

 ピロリ菌の除菌治療は早ければ早いほどいいと言われています。感染により、胃の粘膜が薄くなり、さらに感染が長期になると胃の粘膜が腸の粘膜のような状態に置き換わる、腸上皮化生という状態になります。こういう状況になると胃癌が発生しやすいと言われています。胃癌の中でも進行が早いスキルス胃癌は、ピロリ菌の感染の関与は少ないと考えられています。

 ピロリ菌の以外で癌に関与しているとされているのは、食塩の過剰摂取、喫煙、野菜不足などです。まだ解明されていない部分も多いですが、最近は免疫細胞を利用した治療薬の出現もあり、かなり進行している胃癌でも治癒の可能性が格段に上昇しました。原因には様々な要因が隠されており、これからの研究に原因解明の期待が寄せられています。

 では、今できることは何かと言われると、内視鏡などを用いた定期検査です。今は軽い麻酔を用いてほとんど苦痛なく検査ができる施設も増えてきています。定期的な検査を受け、早期発見、早期治療を受けることで胃癌の死亡率が減少していくとは必至です。近医でご相談され、定期的な検査を受けることをお勧めします。

 ◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで医療コラム「町医者の独り言」を連載中。

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