“悪童”ネリが呆然TKO負け 1回に井上尚弥からプロ初ダウン奪うも井上の3度ダウン奪われ逆転負け 鮮烈右ストレート浴び戦意喪失 病院直行で会見は中止
「ボクシング・4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(6日、東京ドーム)
34年ぶりに東京ドームでボクシング興行が行われ、WBC同級1位の挑戦者ルイス・ネリ(29)=メキシコ=は、王者・井上尚弥(31)=大橋=に6回1分22秒TKOで敗れた。キャリア通算2敗目を喫した。ネリの通算成績は36戦35勝(27KO)2敗となった。
“悪童”がリングに沈んだ。井上が1回に強烈な右を放つと、ドームが思わずどよめいた。ネリも前に出て応戦。左を豪快に振り回して、井上を威嚇した。衝撃のシーンは1回終盤。井上が接近戦からネリの左フックをもろに浴びて、まさかのプロ初ダウンを喫した。
しかし、2回に仕切り直すと、カウンターの左フックを浴びせてダウンを奪い返した。
3回からは激しい打ち合いを展開。4回中盤には互いに足を止めて、挑発しあう異例の場面もあった。5回には井上のパンチがクリーンヒットする場面が続き、徐々にネリが失速。ネリが頭をぶつけて、井上がクレームをつける場面も。ネリには大きなブーイングが飛んだ。その後、ロープ際の攻防で井上の左フックでネリが2度目のダウンを喫した。
井上は6回にロープ際に追い詰めると、圧巻の右ストレート浴びせ、ネリは3度目のダウン。戦意喪失の状況となり、TKO負けが宣告された。
勝利者インタビューで井上から感謝が示されると、うなずき、井上と握手を交わしたネリ。晴れやかな表情でリングを後にしたが、その後は病院に直行し、インタビュー、会見は行われなかった。
日本のボクシング界にとって、因縁の存在だった。ネリは17年のWBC世界バンタム級タイトルマッチでは山中慎介(帝拳)に挑戦したが、ドーピング検査で陽性反応、2018年3月1日に行われた、王者としての山中との再戦で、1回目の前日計量で55・8キロと2・3キロ超過。最終的に54・8キロと1・3キロ超過で失格となり、王座を剥奪された。試合にはTKO勝ちし、山中は引退を表明した。WBCはネリに無期限資格停止処分、日本ボクシングコミッション(JBC)は日本でのボクシング活動停止処分を下し、ネリは日本ではすっかり「悪童」のニックネームと悪役のイメージが定着することになった。
厳しい体重管理とドーピング検査が求められた今回の一戦では、しっかりと調整を積み、前日計量は異例の500グラムアンダーでクリア。「死を覚悟して戦いに挑みたい。KOで必ず勝ちます」と、決死の覚悟を語っていたが、怪物には届かなかった。