【阪神ドラフト選手紹介・近本光司外野手(2)】短期間の予定だった外野への配置転換

 今秋のドラフト会議で阪神から指名を受けた7選手(1~6位、育成1位)を紹介。ドラフト1位・近本光司外野手(24)=大阪ガス=の軌跡を追う。今回は第2回。

  ◇  ◇

 大きな選択をする時がきた。中学3年の夏。近本は進路に悩んでいた。小柄ながらも、エースとして力強いボールを投げていた左腕。淡路島内の高校だけでなく、他の地域からも誘いの声が寄せられる。希望は「強い高校」。2人の兄が通った地元の津名高は一度も甲子園出場したことがなく、進学先に選ぶ気持ちは薄れていった。

 一方で両親は島を出ることに猛反対。「兄と同じ高校でいいじゃないか。誰も知らない地で光司がやっていけるのか。本当に光司に野球の力があるのかというのが心配で」と父・恵照さんは当時の心境を話す。

 一度決断すると曲げない性格だということは両親も分かっていた。それでも、地元で高校生活を送ってもらいたいと家族で何度も話し合ったが、社高校を受験するという気持ちは変わらなかった。「親が決めた道に進んで後悔が残ってしまっても」と、最後は本人の意思を尊重した。

 高校は望み通りの社高体育科に進学。04年センバツでベスト4に進むなど、公立ながら敷地内に野球場や寮もあり、野球に打ち込むには抜群の環境だった。入学時は投手だったが、小柄なため、1年時は体作りを目的として外野手に配置転換。投手としての期待が高かっただけに、当初は体を大きくするための短期間の予定だった。だが、足が速く、打撃もよかったため、外野手としてチームに欠かせない存在となっていた。

 走攻守に加え、責任感も兼ね備えていた。楽天にドラフト1位指名された辰己(立命大)が入学してきた3年時には、先生や先輩らの推薦で寮長に抜てきされた。社高元監督で恩師の橋本智稔氏(現農業高定時制主幹教諭)は「生徒だけでなく、先生方からの信頼も高かった。明るく誠実で誰からも好かれるようなタイプで、先生方と話し合い、当時の適任者は彼しかいないということで決まった」と選出理由を明かす。

 重責を任されたことで計画性も身についた。寮生の日課である学習時間や朝夕の掃除、起床時と夜の点呼など、寮全体の管理が寮長の仕事。よりよい生活環境にするため、先生と生徒の橋渡し役も務めた。

 心身ともに成長した高校3年間だったが、最後の夏の大会は準々決勝で敗退。聖地を目指して島を出たが、高校時代に甲子園の土を踏むことはできなかった。

 ◆近本アラカルト

 生まれ 1994年11月9日、兵庫県淡路市出身

 サイズ 170センチ、72キロ

 投打 左投げ左打ち

 血液型 B

 球歴 父と兄の影響で8歳の時に野球を始める。淡路市立東浦中学校から兵庫県立社高校に進み、高校時代は投手で、夏は県8強が最高成績。楽天1位の辰己は2学年後輩。関学大2年時に外野手に転向した。大阪ガスでは今夏の都市対抗野球で打率.524をマーク。首位打者とMVPにあたる橋戸賞を受賞し、初優勝に貢献した。

 新婚 今年3月に東浦中学同級生の未夢さん(23)と入籍

 趣味 旅行と料理。ドラフト前夜は景気付けにポトフとギョーザを作った。

 座右の銘 毎日を大切に過ごす

 俊足 50メートル走は5秒8

 対戦したい投手 巨人・菅野

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