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小田穂乃実の実になる話⑧「蹄鉄」ってな~に?

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 これがないと走れない!というほど大切な馬の靴「蹄鉄」。競走馬がレースで全力を発揮するために、必要不可欠なものなのです。一体どのような役割を果たしているのでしょうか?栗東トレセンで装蹄師として働いている、松井隆幸さんにお話を聞かせていただきました。主に藤岡厩舎、岡田厩舎、武英厩舎、四位厩舎で蹄鉄を打っておられます。

 「まず、僕たち装蹄師は『護蹄』という考え方を基本にしています。爪の保護ですね。調教で走った時に、爪がめくれてきたり、馬房にいる時に前かき(馬が前肢を振り出して地面をかくこと)をすることがあるけど、はだしだと、爪が減ってしまい、痛めてしまうことがあります」

 競走馬の体重は約400キロ~550キロ。その大きな体を支えている負担は相当に大きいよう。もし蹄鉄が無ければ、歩く時に一歩踏み出して地面と爪がこすれるだけでも、爪が薄くなってしまい、ケガなどにつながります。

 「乗馬の馬よりも特に競走馬は若い馬が多くて、若い馬は皮膚が薄いのでひづめも薄いです。だから余計に傷つきやすいですね。それに、走るスピードも全然違いますしね」。少しでも負担をなくすためには、丁寧な保護がとても大切。基本、蹄鉄を外して過ごすことはないそうです。普段調教を行う時も、レースでも同じアルミ合金の兼用蹄鉄というものを使っています。

 丸、四角、台形と爪の形は1頭1頭異なり、それぞれに合わせて蹄鉄の形を作り、ひづめにはめていきます。大体2週間ほどしたら、蹄鉄がすり減ってくるらしく、主に3週間に1度のペースで打ち替えるのだとか。レースの周期に合わせて2週間で打ち替える時もあるそうです。

 同じ蹄鉄を着けている期間で爪が伸びるので、爪を整える作業を行うのですが、絶妙な加減を保つことがとても重要らしいのです。「爪を切り過ぎると、痛くなったり、歩様が悪くなったりしてしまいます。逆に余らせ過ぎると、脚が地面につく時、当たる部分が脚の先になり、腱が張ってしまいます。そうすると、屈腱炎(屈腱に刺激が加わり炎症を起こしてしまう症状)になりやすくなってしまいます」。数センチ、いや、数ミリのズレも許されないのですね…。

 もちろん、蹄鉄を打つ作業自体も慎重です。もし、少し内側にズレて打ってしまうと、反対側の脚で内側を踏んでしまい、“落鉄”につながってしまうことも。レースで100%の力を出すためにも、正確に打つということが求められます。

 また、蹄鉄にも色々な種類があり、馬の重心の違いなどによっても変わってくるそう。蹄鉄にはトゥシューズと呼ばれる突起があり、しっかり地面を蹴られるように、という目的で通常よりもトゥシューズがしっかり出ているものを使う場合もあるそうです。

 時には、釘を打って爪がボロボロになってしまったり、質が悪く打ってもスポンジのような感触になってしまい打つところがなくなってしまったりも…。こういう馬には『接着装蹄』を行うそうです。爪に釘を打たれることに違和感を覚える馬もいるらしく、接着で走りやすくなることもあるそうです。

 馬の状態や特徴を見て、一頭一頭にあった装蹄を-。「蹄鉄」は全ての馬が全力のパフォーマンスをするための重要なアイテムなのです。

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