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小田穂乃実の実になる話⑫「プール調教」ってな~に?

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 競走馬の調教と聞いてまず思い浮かぶのは、基本的に坂路やコースでの攻め馬ではないでしょうか。その中にも、併せ馬や単走など、その時の目的やそれぞれの馬に合わせた方法で調教は行われています。

 では、「プール調教」という言葉を耳にしたことはありますか?トレセンの中に競走馬用のプールがあり、そこでもトレーニングが行われているのです。というわけで早速、梅田師にプールへ連れて行っていただき、いろいろと教えてもらいました。

 馬が泳いでいる姿ってあまり想像できないですよね。実際に馬がスイスイとプールで泳いでいる様子を見て、私はとても驚きました。馬には浮力が強く働くので、全く泳げないということはないようで、いわゆるカナヅチはいないそう。もちろん、得意不得意はあります。

 もともと栗東トレセンのスイミングプールは、昭和63年8月に“強い馬づくりそして故障馬のリハビリのため”に設立されたらしく、

①水に慣れるための馴致用プール

②直線プール(長さ25メートル・幅員2メートル・水深3メートル)

③円形プール(1周50メートル・幅員3メートル・水深3メートル)

の3種類が設置されています。馴致用は両側を壁に囲まれており、真ん中に行くにつれて下っていく谷のような作り。ちょうど坂を1番下まで下った頭上に、シャワーがあり、上から水を浴びられるようになっています。その他にも、ちょうど馬の腰に当たる位置に、水が出てくるところがあります。

 初めてプールに入る馬は、水を張っていない状態の馴致用プールを常歩で通過するところからスタート。これを無理なくクリアできるようになったら、30センチくらいの水を張るそうです。

 そして次に直線プールへ進み、準備運動が完了したら、いよいよ円形プールでのトレーニングへ。直線プールは水が逆流しており、負荷がかかるようになっています。調教中は助手の方が馬につながれた紐をしっかり握り、常に横に付き添って行われています。

 では、そもそもどのような目的でプール調教は行われているのでしょうか?「脚部に不安を抱えている馬がプールを調教に使うケースもあるけど、プール調教で馬をつくるってよりも、リフレッシュとか普段はあまり使っていない部分を動かすために使うことの方が多いかなぁ。ほら、人間でもプールに行った次の日は、全身筋肉痛になったりするやろ?やっぱり体全部を使うことができる。追い切った次の日に体をほぐす目的で使うこともあるね」と梅田先生。強い調教でイライラしている馬は、泳ぐことで背や腰の緊張が取れるなど、ストレッチ効果でフラストレーションが解消される傾向にあるそうです。私もむしゃくしゃしている時に、ひんやり冷たい水の中で伸び伸び泳ぐことで、すっきりすることがよくあります。

 「あと、プール調教は普段とは全く違う特殊な環境の中でするから、メンタル面で鍛えられる部分は大きい。もともと馬は見通しのいい草原で群れて行動してきた動物だから、本当はゲートや馬運車みたいに狭くて暗い場所にいるのは苦手。だから、ゲートの中で潜ったり、立ち上がったりしてしまう馬が馴致用プールを使って、狭い所で我慢する練習をすることもあるね」。馬の習性的にゲートや馬運車は不安だらけ。群れる動物であるという習性を生かして、水を怖がる馬を怖がらない馬の後ろに続けて水の中に入れたりと、集団調教を上手に行います。私も実際に水が張られていない時に馴致用プールの中を歩いたのですが、かなりの圧迫感がありました。

 馬場を走る時と比べ、プール調教では実際にどれくらいの負荷がかかっているのでしょうか。1周50メートルの円形プールを40秒で1周すると、馬場の1Fを13秒~15秒で走る速度に相当するそうです。かかる負荷はやはり大きく、この速度で50メートルを1周すると、5倍の250メートルを馬場で走ったことに相当するようです(ただ、40秒はとても速いペースだとか)。昔はプールで追い切りをする馬がいたり、一日に10周泳いだりと、プールでもかなり強めの調教が行われていました。今は多くても3周くらいまでだそうです。

 円形プールの下に降りていくと、水槽のようにガラス張りになっており、そこから泳いでいる様子を下から拝見させていただきました。梅田先生は調教を見ながら「この子は慣れてるな~」「この子苦手なんやろな、ぎこちないわ」とジャッジしていましたが、実際、各馬の泳ぎ方は全然違うのです、後肢を上手に動かしている馬もいれば、前肢だけで泳いでいる馬も。そして何より驚いたのは、泳ぐ脚さばきの力強さ。かなり分厚いガラスが張られていたのですが、脚を動かす度に「ザッザッ」と言う音がはっきり聞こえてきました。かなりの運動量であるということがよく分かります…。

 先週の天皇賞・秋に出走したドウデュースが最終追い切り翌日の調整メニューに取り入れたり、白毛馬ダノンハーロックが体を絞り、左右のバランスを整える目的で使用したり-。あまり普段スポットの当たらない「プール調教」ですが、かなり重要な役割を果たしているのですね。

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