2024.02.22

競馬ギガ盛ブログ「川島騎手」（２月２２日）

　ご無沙汰しております。栗東・山本ユウキです。最近はもっぱらＸばかり。久々の更新となりました。

　さて、今週末でＪＲＡラスト騎乗を迎える川島信二騎手（４１）＝栗東・フリー。今までの思い出話やエピソードなどお話していただきましたが、競馬担当になって５年目の私、実はこれが初めての川島ジョッキーの取材でした。落ち着いた語り口調から、いかにも頭のいい人の話の組み立て方。聞いていてめちゃくちゃ引き込まれる、魅力的な方でした。今までもっとたくさん取材していれば…と後悔です。

　引退に際して、印象に残った話がありました。「僕は『騎手』という仕事に誇りを持っていたんです」と切り出した川島騎手。その真意は－。

　「プロスポーツ選手という中で、例えば野球だったら野球選手、サッカーだったらサッカー選手。公営競技でもボート選手、競輪選手と言いますが、競馬は競馬選手とは言いませんよね。競馬は『騎手』。漢字で書くと、『馬』の『大』きな『可』能性の担い『手』。すごく誇らしい言葉だなと。その誇りを持って、騎手としての仕事を全うできたと思います」。

　『騎手』という言葉。言われるまで気付きませんでしたが、確かにその通り、いい言葉です。それを意識して乗っているジョッキーがどれだけいるのか分かりませんが、人や血統などさまざまな縁に恵まれて「数奇な運命をたどっている」と話す川島騎手は、その神髄をついたと言っていいかもしれません。

　また、同じタイミングでステッキを置く先輩の秋山真一郎騎手（４５）＝栗東・フリー＝の言葉も、ジョッキー人生の大きな支えとなったそうです。チェーンの居酒屋で飲んでいた時のこと。ふと、取り皿を手にした秋山真騎手。「ジョッキーとは、こういった取り皿を丁寧に積み重ねるんだよ」と語りかけられたそうです。さて、どういう意味でしょうか。

　「取り皿って使いやすいよね。これでいいんだよ。それを積み重ねれば、信頼となるから」。それまでは自分の感情だけで乗るなど、いきなり大きな器をつくろうとしてしまっていたという川島騎手。「浅はかでしたね」と振り返りますが、その言葉のおかげで騎手としての心持ちが変わったと言います。「最後までその気持ちで全うしたいですね」と、ラストライドまでその思いを胸に、真摯（しんし）に馬と向き合います。

　この後は庄野厩舎で調教助手に転身します。「調教から馬を育ててきたジョッキーだと思います。それを庄野厩舎の馬に伝えられるように努めたい」と力強く言い切ってくれました。

　ちなみに、今週土日は阪神で６鞍に騎乗。来週火曜に行われる名古屋の地方交流競走が正真正銘のラストライドです。そこで騎乗するのはミエノソニック。現役時代に主戦を務めたミエノサクシードの子です。縁がつないだ最終騎乗まで目が離せません。