阿部詩 金へ二人三脚 付け人「和輝くん」と出陣 勇気と感動届ける
柔道女子52キロ級で、日本勢では同階級初の金メダルを狙う阿部詩(21)=日体大=は、兄で男子66キロ級代表の阿部一二三(23)=パーク24=とともに25日に登場する。詩を支える練習パートナーは、兄の一二三と日体大の同期でもある森和輝さん(23)=近畿医療専門学校所属。3学年上ながら、友達のように何でも話せる理解者とともに二人三脚で大一番を迎える。
「詩」に対して「和輝くん」-。おおよそ3学年上の先輩に対する呼び名とは思えないフランクさが、2人の関係性を物語っている。「先輩だと思ってないと思う(笑)。付け人なのでいいけど…」(森さん)。会話もほぼため口だが、雑談から悩みまで、友達のように何でも話せるパートナーが、詩の支えになっている。
森さんは兄の一二三と同級生で仲が良く、食事の際に詩が同席することもあって顔見知りになった。詩も日体大に入学すると、山本洋祐部長の鶴の一声で練習相手を務めることに。ただ、最初に帯同した19年11月のグランドスラム(GS)大阪大会は、優勝すれば五輪代表に決まる大一番の決勝で、詩はブシャール(フランス)に敗れた。
責任を感じた森さんだったが、20年2月のGSデュッセルドルフ大会でも声が掛かり、無事に五輪切符を獲得。直後、詩側から「東京五輪まで一緒にやってほしい」と伝えられた。地元の熊本に帰って教員になる予定だったが、「なかなかない経験。詩を支えたい」と一念発起。縁のあった近畿医療専門学校の所属となり、正式にパートナーを受託した。
金メダル候補の練習相手として模索する日々だが、表彰式を終えた詩に「ありがとう」と声を掛けられる時が報われる瞬間だ。詩は「(森さんは)いつもへらへらしてるが、それに助けられている。日々練習がきついので、それ以外は和輝くんがいてくれて切り替えられる」と感謝する。
開幕となった23日、詩はJOCを通じて「覚悟を持って戦おうと練習している。目標は兄と2人で金メダル。コロナ禍で厳しい状況だが、勇気と感動を届けたい」とコメントを発表。五輪史の新たな1ページを豪快な柔道で刻みにいく。