【瀧本誠の目】阿部一二三のパワーはクラス随一 詩は積極的な攻めでV確信
柔道界に最強兄妹が誕生した-。女子52キロ級決勝で、阿部詩(21)=日体大=が世界ランク1位のアマンディーヌ・ブシャール(フランス)に一本勝ちし、同階級では日本勢初となる金メダルを獲得。直後には、男子66キロ級決勝で兄の阿部一二三(23)=パーク24=が、バジャ・マルグベラシビリ(ジョージア)に優勢勝ちで初制覇。日本オリンピック委員会(JOC)によると、五輪での兄妹による金メダルは日本初の快挙。それも同日での偉業達成となった。
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個人的な考えなのですが、一二三選手の柔道は自分の攻撃をするというよりも、相手の攻撃を防ぐところから入っているような気がします。相手が釣り手を持とうとすると、それを絞って、よく頭をぶつけ合うシーンが多かったと思います。相手に何もさせないシーンが目立っていたように感じました。このクラスでは彼は相当パワーがあります。
何が良かったかというと、隙を見つけて攻めるので、技に入るときはすごく速い。両袖を絞っている分、かかります。研究されてくると大変なスタイルですが、今のところ外国人で彼の上をいく選手はいない印象です。相手に負けないための戦術ですが、それでも勝つところはさすが。相手を投げるパワーと技術があります。
丸山選手との一戦に勝ったことが大きかったですね。この階級では、日本の代表争いが世界で一番レベルが高い印象ですし、おそらく丸山選手が出ていたとしても優勝していたでしょう。
詩選手は決勝だけを見れば、相手に先に持たれて、頭を下げられて、最初は勢いで負けていました。そこからだんたんと相手にスタミナがなくなってきました。ペースが変わりましたし、相手のスタミナ切れです。詩選手にスタミナ切れはありませんでした。
最初は狙いすぎて、空回りしていたように見受けられました。その後は先に持って積極的に攻めていましたし、このままいけば優勝するだろうなと思っていました。(2000年シドニー五輪男子81キロ級金メダリスト 駒大総合教育研究部 スポーツ健康科学部門准教授・瀧本誠)