村上茉愛、寺本に届けた「感謝」のメダル 志願の補欠帯同、体操女子の「お母さん」へ
「東京五輪・体操女子種目別床運動・決勝」(2日、有明体操競技場)
女子種目別決勝の床運動で2017年世界選手権覇者の村上茉愛(24)=日体ク=が14・166点でメルニコワ(ROC=ロシアオリンピック委員会)と並び、銅メダルを獲得した。女子の日本勢は1964年東京五輪で団体総合銅メダル以来57年ぶりの表彰台となり、個人種目では初の快挙。予選は8位だったが、一発勝負の決勝で最高の演技をみせた。
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親友に届けるメダルとなった。ともに長く日本代表をけん引し、今大会は補欠としてサポートしてくれた寺本明日香に-。
昨年2月に左アキレス腱を断裂した寺本は、選考会で奮闘したものの、NHK杯で5位に終わり、わずかな差で3大会連続代表入りを逃した。それでも、補欠での帯同を志願。理由は何よりも村上の存在があった。
「茉愛がいろいろ背負ってしまう。私が練習にいることで何か助けることができたら」-
体操ニッポン女子にとって、寺本の存在は大きい。寺本自身が言うには、競技で引っ張る村上が「お父さん」で、自分は「お母さん」。12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪を経験している肝っ玉母さんの存在は、究極の大舞台を前にしたチームに安心感をもたらしてくれた。
選手村に入る前、寺本は各選手に手紙とダルマの形をした手作りのお守りを渡した。村上への手紙にはこう書いてあった。「茉愛がうれしいなら私もうれしいから。悔いなく頑張ってきてほしい」。思いに答えるべく、村上は誓っていた。「明日香の分まで背負って五輪でいい演技をして、感謝を伝えたい」。 東京五輪の舞台での、最後の演技。全身全霊の舞は、きっと明日香に届いた。