様々な思いの詰まった高校野球広島大会
強豪校が次々と敗れていく中で、広陵がきっちり出場権を勝ち取った。甲子園での活躍にも期待がもてる広島大会だった。
今夏は95校93チームが参加した。印象に残った選手に、今春のセンバツ大会に初出場した広島新庄の左腕・山岡就也投手(3年)がいる。最速144キロで鋭く曲がるスライダーが武器。センバツでは、初戦は東海大三を2安打13奪三振の力投で完封。2回戦の桐生第一戦は延長十五回を戦い1‐1の引き分け再試合。2試合連続完投で計23回を投げ抜いたが敗れた。
今大会では万全の状態でない中、決勝戦では敗れはしたが、9回2失点と好投した。
就也という名前は父・章二さんが名付けた。安芸高田市吉田町に転勤で引っ越したとき、山岡が生まれた。同町は戦国大名・毛利元就が城を構えた場所。さらに1997年は生誕500周年記念の年だった。章二さんは「就、の一文字をもらいました。大きく成長してほしいという願いを込めて」と話した。
中学時代は地元中学の軟式野球部に所属し、3年間で公式戦未勝利だった。強豪校へ進学し、エースの座まで昇り積めた。優勝を果たせず「悔しい」と肩を落としたが、それまでの活躍に章二さんはは「よく頑張ったと思う」と拍手した。卒業後は大学に進学し野球を続ける予定だ。
印象に残った一つに部員14人の並木学院がある。今年は創部7年目で夏、初勝利を挙げた。8人の3年生で唯一、師橋証内野手が未出場に終わった。
高校から野球を始めた師橋。村田啓祐監督(43)には忘れられない出来事がある。初勝利後、広島市内のプールでクールダウンを行ったときだ。着替えを忘れた主力選手に、師橋は自らの着替えを貸した。「少しでも早く疲れをとってほしかった。自分にできることは声を出し選手をサポートすること」。野球を通じた成長した心。「絶対に試合に出すから」と約束した。それだけに「頑張ってきた選手。出せずに悔いが残る」と唇をかみしめた。
グラウンドに立てなかった悔しさはない。「迷惑をかけたこともあったけど3年間、努力できた。みんなには『ありがとう』と言いたい」。優勝を目指す選手がいれば、試合出場に喜びを感じる選手もいる。さまざまな思いが詰まった、広島大会だった。
(デイリースポーツ・市尻達拡)
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