高山、悲願の4団体制覇へ好機到来!
世界を舞台に真っ向勝負を演じてきたボクサーだからこそ転がり込んだ幸運だ。前IBF世界ミニマム級王者で同級3位・高山勝成(31)=仲里=が大みそか、大阪・ボディメーカーコロシアムで同級6位・大平剛(30)=花形=と行うIBF王座決定戦に、WBOの王座ベルトもかかることが決まった。
無冠から一気に2冠王者となるダブル王座決定戦はもちろん日本で初となる。海外でも米国で03年4月、WBC、IBF世界ライトヘビー級でターバーVSグリフィンが行われた例がある程度だ。高山にとっては年内はあきらめていた悲願の主要4団体制覇。そのチャンスが突然、まさかの展開で到来した。
00年にプロデビューし15年目。世界ミニマム級4団体完全制覇を「集大成」に位置づけてきた。8月、最後の1冠、WBOベルト奪取を狙いメキシコに乗り込んだ。だがフランシスコ・ロドリゲス(メキシコ)との統一戦は判定で敗れ、夢は届かず王座も失った。
失意の帰国後は引退を本気で考えたが「このままで終われない」と戦線に復帰した。再起に合わせるかのように高山に風は吹いた。
統一王者だったロドリゲスが減量の厳しさからまずIBFベルトを手放した。続いて12月初旬までに、WBOベルトまで返上。両王座が空位となった。
11月中旬、IBF戦が決定すると、WBOに動きがあった。高山が同1位、大平が同2位と大幅に順位を上げランクされたのだ。「WBOからのメッセージ」と高山陣営は受け取った。交渉担当者が渡米しニュージャージー州のIBF本部に乗り込み直談判。当初は難色を示したIBF側も9日までにダブル決定戦を了承した。
「ロドリゲスに敗れたけどWBO関係者は高山の戦いを高く評価していた。日本進出の足がかりに、高山に王座に就いて欲しい思いを感じた。後出しで乗っかられる形になったIBFは嫌がったけど何とか最後は認められた」。千載一遇の好機をモノにした陣営は執念の交渉を明かした。
指名挑戦者決定戦を勝ち上がれば王座に挑戦できるIBFと違い、WBOで世界獲りは狭き門。その欲しくても遠かった最後のベルトが国内で、しかも“格下”を相手に決定戦で獲得できるのだ。「自分のプロキャリアのすべてをかける」と、高山の気合は半端ではない。
次戦が12度目の世界戦となる31歳は不屈のファイターだ。05年にWBC世界同級、06年にWBA世界同級暫定王座を獲得。09年にJBC(日本ボクシングコミッション)に引退届を提出し日本を離脱。当時は国内で認められていなかったIBF、WBOの王座を奪いに世界へ打って出た。
南アフリカ、メキシコと完全敵地の中、厳しい戦いを繰り返した。アウェー判定に泣き、異国の熱狂的ファンに命の危険にもさらされた。そしてついに昨年3月、メキシコでIBF王座を獲得し3団体制覇を果たした。
「09年から4年半、世界で戦ってきた。勝っても負けても海外で評価された積み重ねがある。自分の道を突き進んできた。だから『幸運』とは思っていない。その時が来た、という思い」。世界が逆境に挑み続ける「TAKAYAMA」を認めた成果だった。
勝てば「グランドスラム」はもちろん、3度目の世界王座返り咲き、4本目の世界ベルト奪取はともに日本最多の偉業となる。
陣営は「ラッキーなのは高山じゃなく大平。リングに上がれば何が起きるか分からない」と警戒する。高山陣営が“お膳立て”した舞台は大平にとってはまさに“棚ぼた”だ。どちらが2冠獲得するにしろ、日本ボクシング界に歴史を刻む一戦となる。(デイリースポーツ・荒木 司)
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