【スポーツ】事故相次ぐプロレス界 ブレーキを踏むときか

 ブレーキを踏むときが来たのだろうか。今年に入り新日本プロレスのリング上で事故が相次いだ。

 3月3日には本間朋晃が中心性頸髄損傷、4月9日にはIWGPヘビー級王者オカダ・カズチカに挑戦して38分を超える激闘の末に敗れた柴田勝頼が硬膜下血腫。日本最大手団体での出来事ということもあって、業界に少なからぬ衝撃を与えている。

 そして先日、昨年4月から世界最大の団体WWEで活躍している元新日本プロレスの中邑真輔からも、この事態を憂う言葉を聞いた。中邑は先日に行われた日本のメディアとの合同電話インタビューで、「最近の日本のスタイルというかトレンドというか、危険な技の応酬で、立て続けに重傷者が出てきている。各レスラーが危険な技、リスクを顧みない試合の構成についてもう一度考える時期なんじゃないかと思う」と、日本のプロレス界が危険な傾向にあると指摘し、自制の必要性を唱えたのだ。

 その危険な傾向を象徴するような試合が、1月4日の新日本プロレス・東京ドーム大会で王者オカダにケニー・オメガが挑戦したIWGPヘビー級選手権試合ではないだろうか。46分を超える激闘は両者が終始エンジン全開。大技やアクロバティックな空中殺法が飛び交い、オカダがオメガを高々と放り上げてリング下の机へ落とす、目を疑うような場面もあった。死力を尽くした戦いには心を打たれたが、危険と隣り合わせのような激しい攻防の連続には恐怖すら感じた。

 中邑の発言の後、新日本プロレスの永田裕志にも考えを聞いた。今年でデビュー25年を迎える大ベテランも「このところ、いい試合、壮絶な試合と言われるものが、そのような傾向になりつつある。いい例が1月4日のオカダとケニー。あの試合はすばらしいと思う。ただ、あれを目指してはダメ。あの試合は世界的にも話題になっているけど、違うととらえてほしい」と語り、中邑と同意見だった。

 言うまでもなく、プロレスは5秒以内の反則が許される、極めて特異で制限の少ないスポーツだ。それ故に自由で多様な戦い方が創造され、進歩を遂げてきたが、それ故に安全対策という制限をかけにくいとも言えるだろう。残念なことにプロレス界には過去にいくつかの事故があり、安全性が議論されることもあったが、具体的な動きはほとんどない。

 中邑と永田の言葉が考え方を変えるきっかけになってくれることを願う。(デイリースポーツ・洪経人)

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