【競馬】19年廃止が決まった降級制度 そのメリット、デメリットは?
夏番組で4歳馬の収得賞金が半分となる「降級制度」が、来年を最後に廃止されることが決定。現2歳馬が4歳となる2年後の19年夏から適用されることになる。
降級制度を廃止する理由は何か-。JRAは、クラス内の実力不均衡、高条件馬が大幅に減少して高条件戦を多く編成できないことを問題点に挙げている。ただ、制度廃止によるメリット、デメリットも生じる。現場で指揮を執る調教師に取材した。
今年のクラス編成でオープンから準オープンに降級し、6月の阪神開催ですぐに結果を残したファインニードル。管理する高橋忠師はこう話す。「降級が廃止されると、厩舎の勝ち鞍は減る。特に個人の馬主さんにとっては厳しくなるでしょう。それをアテにしている馬もいるから。白黒はっきりするという半面、牧場にとっても痛手。特に牝馬の場合だと、血統表に残る勝ち数がひとつ減るだけで随分印象が違う」。オーナー、調教師、生産牧場の視点からはデメリットの方が多いというわけだ。しかし、「ファンにとっては分かりやすい」と、ファン目線でいえば、メリットもあるようだ。
梅田師の説明も興味深い。「降級の時期に合わせて、使うレースを選択するのではなく、馬の状態に合わせてレースを選択することができる」。これは馬にとってのメリットだ。放牧に出したくても、“降級だから”と使うこともある。降級初戦で勝てばいいが、降級馬は1頭だけではない。「オーナーを損した気分にはさせたくないからね」と話すように、惜敗が続けば、もう1戦、もう1戦と使うことにもなる。降級によって、休ませる時期が先延ばしになりかねない。
収得賞金が半額になることで、レースに出られないことも起こる。「ショウナンマイティは12年の安田記念を除外になった。降級制度がなかったら、出走できたのに…」。クラス再編成直前に大阪杯(当時はG2)を勝ったが、再編成で収得賞金は半額に。収得賞金の順位で補欠の1番手となってG1出走がかなわなかった。
木原師の見解も的を射ている。「時期があるからね。“まだ”って時期に、強い馬と戦って自信を失うこともある」。テイエムジンソクは今年、準オープンの東大路Sを快勝後、大沼S、マリーンSと3連勝。4歳だった昨年5月に準オープンを勝ったが、クラス再編成で降級して再び準オープン馬に。そのあとは2着3回、3着3回と惜敗が続き、8戦かかってようやく準オープンを卒業した。「何かふっきれたように、強くなった。準オープンでもまれて、なかなか勝てなかったことも、今につながっているのかも」。降級がなかったら、今の活躍はなかったかもしれない。
多くの調教師が口にしたのが次の3つの言葉だ。「新しくするということは、不満も出る。でも、すぐに慣れる」。思えば、87年までは4歳夏季、5歳夏季の2回にわたって降級制度の変更があった。30年たった今、“そんなこともあったな…”と振り返り、現ルールのもと、円滑に行われている。また、「みんな同じルールだから」というのも納得。全馬、全厩舎、同じルールの下で行われるのだから不均衡はない。
「若いうちに勝って、早めに賞金を加算すると、あとで苦しくなる」。これは大きなデメリットではないか。馬はデビューすると、まずはクラシック出走を目標にするもの。例えば、2歳の時に少頭数のオープンを勝ち、賞金加算すると、先になってから、鳴かず飛ばずで苦労することもありそうだ。適用開始の19年夏番組以降、どういった問題点が浮き彫りになるのか。オープン、準オープンといった上のクラスの頭数が増えすぎた場合、使いたいレースに使えない馬が頻発するかもしれない。そういった時に、JRAがどう対処するのか。興味深い。(デイリースポーツ・井上達也)
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