【芸能】オスカー受賞の辻一弘氏 不慣れな会見でにじんだ誠実さ、日本の若者への思い
「第90回アカデミー賞」で、日本人初のメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻一弘氏(48)=米ロサンゼルス在住=が20日に都内で帰国会見を行った。オスカー像を手に登場した辻氏は、細身の体に目力の強さが印象的なアーティストだった。
“時の人”は約50媒体、100人の報道陣を前に「どうもありがとうございます。わざわざ来ていただいて」と第一声。京都弁のイントネーションで照れくさそうに口を開いた。この日の午前5時に羽田空港に到着。テレビ生出演をこなした後だったが、疲れたそぶりは見せなかった。
京都・龍谷大平安高時代から特殊メークの世界に憧れ、1996年に渡米。米メーキャップ界の巨匠ディック・スミス氏に師事してハリウッドで活躍後、2012年に映画界を引退した。肖像彫刻の芸術家に転身していたが、今回、俳優ゲイリー・オールドマン(59)からのラブコールで一時復帰。「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」(30日公開)でオールドマンを似ていないチャーチル元英首相に変貌させ、主演男優賞獲得に一役買った。
映画界を去っていたため、オファー受諾は「人生を裏切ること」のように思えたという辻氏。迷った末に参加した作品で栄冠に輝き、「この映画で取ったことが意味あると思う。映画が素晴らしいし、メークも作品の一員として認められてよかった」と達成感を漂わせた。
受賞スピーチを「覚えていない」という辻氏は、会見も不慣れな様子だった。冒頭から正面ではなく、司会者がいる右側を向いたままやりとり。イスも斜めにしたため、カメラマンが撮影に苦労したが、「僕、そういう(質問者を見ない)のは苦手」といい、司会が正面に移動。珍しいシーンは新鮮に映った。
4泊の強行軍ながら、1月下旬に特殊メークの講義をして以来の帰国となった辻氏は「日本の若い人で特殊メークを目指してる人に、こういう可能性があると夢を与えられたのはいい」とうなずいた。日本の若者へのメッセージを求められると、「やりたいことを確実に、自分の心に正直に見出して、他人の意見を聞くなといつも言う。先生、兄弟、親に聞くと、いろいろアドバイスをくれるけど、自分の心の中は自分しかわからない。流されてしまうと後で後悔する」と抱いていた思いを口にした。
そして、「(決めたら)10年続けること。海外に1カ月以上、住むことが大切。本当にやりたいことをやってると、向こうからつながってくる。自分のやりたいことを見極めること。自分を信じること。日本人の悪いクセで、自分を信じられないのはあるけど、直した方がいい」と続けた。信念を貫き、結果を出してきただけに説得力があった。
この日の“金言”が届けば、近い将来『第2の辻一弘』が誕生するはずだ。(デイリースポーツ・大島一郎)
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