【スポーツ】次代の角界担う遠藤、新三役確実な夏場所へ精力稽古
大相撲夏場所(5月13日初日、両国国技館)で新三役が確実な遠藤(27)=追手風=が春巡業で精力的な稽古を行っている。6日の兵庫・宝塚巡業では大関高安(田子ノ浦)に指名され16番。13日の神奈川・川崎巡業では横綱鶴竜(井筒)の胸を借り13番。いずれも内容は完敗だったが、両足の故障に苦しみ続けた日々を越え、横綱大関の相手を務める状態になったことが、何よりの収穫だろう。
東前頭筆頭だった3月の春場所でついに壁を突破した。初日に高安を送り出しで撃破して乗った。3日目に関脇御嶽海(出羽海)、4日目に大関豪栄道(境川)と連破。4勝4敗で中日までしのぐと10日目から5連勝。9勝6敗で勝ち越し、技能賞を受賞した。
前頭筆頭は過去3度、鬼門だった。14年3月の春場所は勝ち越せば年6場所制定着の58年以降、最速タイとなる初土俵から所要7場所での新三役が確実だったが6勝9敗。その後も、上位の壁にはね返され続けた。
イケメンな上にスピード出世で相撲人気回復の立役者。大関候補のホープにとって、三役はいつしか近くて遠い地位だった。
15年春場所では5日目の松鳳山(二所ノ関)との一番に突き落としで勝利した際、左膝半月板損傷・前十字靱帯損傷の重傷を負い休場。昨年7月には右足首に初めての手術を施した。
稽古すら満足にできず、もがいた試練がようやく報われつつある。師匠の追手風親方(元幕内大翔山)は「押し込まれても回り込めるようになった。それだけ足の状態が良くなっている。本人がずっと我慢してきた。左膝をケガしてかばううちに足首も。大学で右膝をやっているから両方はかばえない。毎場所のようにケガして本人が一番苦しかったでしょう。腐らないでやった」と目を細める。
27歳、人気力士は寡黙なアスリートだ。師匠は「ポーカーフェースってみんな言うけど昔のお相撲さんはみんなそうだった。勝っても負けてもしゃべらない。しゃべると怒られた」と、弟子の気持ちを代弁した。
ケガと付き合い、上位と勝負できる体になっているのは確か。遠藤は「番付で感覚が良い、悪いというのはない。変わらず体調を整えるだけ。(新三役に)満足はしていない」と言うが、巡業中の稽古も積極的に臨む。
「朝の稽古でもいっぱいいっぱい相撲を取るのが最近は増えてきたかな。次、取れないのかもしれないけど、増えてきたと思う」と独特の表現で話し、前だけを向く日々だ。
屈指の人気力士も27歳と中堅の域。20代前半の阿武咲(阿武松)、貴景勝(貴乃花)、阿炎(錣山)ら新勢力の台頭も著しく、三役に定着し、その上を狙うのは使命だ。
「毎日精いっぱい、めいっぱい相撲を取れるように体調を整えるようにしないと場所に対する気持ちは高まってこない」。三役でもしこ名は本名の「遠藤」のままを貫く。次代の角界を担う出世争いは遠藤が中心にいてこそ、盛り上がる。(デイリースポーツ。荒木 司)
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