【野球】生涯打率1位 ヤクルト青木の「変えられるすごさ」
ヤクルト・青木宣親外野手が、NPB生涯打率のトップに立った。3日の中日戦で算定基準の4000打数に到達。打率・327は、それまで最高だったレロン・リー(元ロッテ)の・320を上回った。本人は「現役が終わった頃にそうなればいい」とあっさりしたものだったが、80年を超える歴史で現時点での首位打者。偉業であることに異論の余地はない。
今季メジャーから7年ぶりに復帰。キャンプから取材してきて目に付いたのは、練習量の多さはもちろん、変化をためらわないスタンスだ。名球会の先輩で11年まではチームメートでもあった宮本慎也ヘッドコーチは「いろんないい選手を見ているけど、あれだけいろいろフォームを変えて打てる選手は知らない」と話した。
ホームベースにかぶさり気味に構える青木の打撃フォーム。その中でも、バットを倒す角度、右足の上げ方など、パッと見て分かるマイナーチェンジは日常茶飯事といえるぐらい頻繁にある。ヒットが出ているにもかかわらず、試合中に変えることも少なくない。
一流バッターは『自分の型』にこだわるというイメージがあった。宮本ヘッドは「オレなんかはしっかり決めてやるタイプだから。近いのは古田(敦也)さんかな。感覚の部分がすごい」と舌を巻く。絶えずフォームを変化させて対応し、結果を出していくのは、一流の中でも異色の存在なのだ。
道具に対するスタンスも同様だ。キャンプからの約3カ月で、さまざまなバットを用意。色だけでも白木、赤褐色、黒といった具合で、同色でも先端のくりぬきの有無など形状が違うものがある。球団関係者は「2000本も打つような選手で、あそこまで変える選手は珍しい。とにかく器用なので使いこなせちゃう。天才」と感嘆していた。
また、打席によって左手だけ手袋を外したり、着けたりすることもしばしば。素手で打席に立つ選手がほぼいない近年では、新鮮に映る。オープン戦初安打や今季開幕戦の初安打は、凡退後に手袋を外した打席だった。青木自身は「米国でもしょっちゅうやっていた。まあ、いろいろある」と多く語らないが、それこそ言葉にはできない“皮膚感覚”で微調整している部分なのだろう。
一方で、変わらないすごさもある。通算2432安打を誇る石井琢朗打撃コーチは「ヒットへのこだわりというか執念」を挙げる。試合展開やそれまでの打席結果に左右されないことは、当たり前のようでも難しい。「どんな状況でも1打席1打席、自分を持ってやっているなと感じる。ヒットを打つことにどん欲。チーム打撃も大事だけど、これも大事なこと」とぶれないメンタルをたたえた。
青木はヤクルト復帰当初から、日本の投手への対応をポイントに挙げていた。開幕からしばらくは「まだしっくりきていない」という言葉を聞く機会が多かった。変化を続けてアジャストしていく安打製造機の本領発揮はここから。助走期間を終え、快音連発の季節が巡ってくる気配がする。(デイリースポーツ・藤田昌央)
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