【スポーツ】Jヴィレッジ全面再開 サッカーの聖地が新たな一歩
サッカーのナショナルトレーニングセンターである「Jヴィレッジ」が20日、全面再開した。大きな被害をもたらした2011年3月11日の東日本大震災、東京電力福島第一原発の事故を受け、対応拠点となっていた“聖地”は、新たな宿泊棟や練習施設が増えるなど、アップグレードして再興。再開初日には、記念式典やグランドオープンフェスが行われ、多くの来場者が復興のシンボルとなったサッカーの聖地の新たな一歩を祝った。
抜けるような青空と、まぶしく照りつける太陽が再出発を祝福しているようだった。午前8時過ぎ、この日の全面再開に合わせて新設されたJR常磐線の新駅である「Jヴィレッジ駅」に、開業後の一番列車が到着すると多くの利用客が列車を降り、Jヴィレッジへと歩みを進めた。
鮮やかな緑のピッチで行われた記念式典。高円宮妃殿下をはじめ、多くの来賓が全面再開を祝福した。原発事故の対応拠点となっていた際には、芝生の上に鉄板が敷かれ、作業用の重機や資材が置かれていたが、その面影はもうない。震災後、初めてとなるなでしこリーグの公式戦も行われた他にも、広大な敷地の各所では、サッカー教室だけではなく、野球やランニング教室、ラグビーや車椅子バスケットの体験コーナーなど、種目を超えたスポーツイベントが行われ、「ふくしま食とお酒のマリアージュ」と銘打たれた地元福島のグルメ企画も出店されていた。
2002年の日韓W杯で、日本代表のベースキャンプ地となるなど、日本サッカーを支えてきたJヴィレッジ。全面再開の式典に来賓として参加した日本協会の田嶋幸三会長は「1997年にここができた時、サッカー界の気持ちは『ついにこんなものが日本にできたんだ』というものだった。2002年のW杯を前にし、いろんなスタジアムの構想が上がっていく中で、それに先駆けてここができた。日本がこれから世界のサッカーに追いつくためにふさわしい場所だと思ったのを思い出した。Jヴィレッジなくして日本サッカーの発展はなかった」と感慨深げに話した。
イベント参加に加えて、なでしこリーグの千葉-マイナビ仙台戦を視察した女子代表の高倉監督は、地元の福島出身。当日は、新駅に停車する電車を利用してJヴィレッジまで来たことを明かし「たくさんのお客さんもいらしていて。駅も使わせていただいているんですけど、いろんな方がいろんな形で、使用してくださって、また福島に活気が戻る一つの場所になるといいなと思います。グラウンドなんかもすごくきれいでしたし、すごく嬉しいです。また戻ってきたんだな、と今日、本当に実感しました」と笑顔を見せていた。
来年に迫る東京五輪では、男女のサッカー代表が直前キャンプを行うことが決定済み。“復興五輪”と位置づけられる自国開催の大会に臨むチームを支えるだけではなく、今後も長期間にわたって日本サッカーの発展に寄与してくれることを願いたい。聖地復興の第一歩は、そんなことを感じさせてもらった一日だった。(デイリースポーツ・松落大樹)
関連ニュース
編集者のオススメ記事
オピニオンD最新ニュース
もっとみる【野球】ロッテ「初球ストライク率アップ」の狙い 新テーマ課した理由を建山投手コーチが語る
【スポーツ】大相撲春場所で番付表ブックカバーを自作、無料で持ち出しOKの古い番付表を利用
【ファイト】なぜ藤波辰爾の西村修さんへの弔辞が涙を誘ったのか 18年間もの絶縁から2人を師弟関係に戻した「無我」の2文字
【野球】「若いうちに3年後、5年後の自分を考える時間があった方がいい」大学准教授になった元楽天・西谷尚徳さんの願い 現役時代から二刀流で学ぶ
【野球】トライアウトを経て阪神入りした元楽天戦士「私はもう終わるから、他の若い選手を使ってください」2度目の戦力外通告受け入れ教職の道へ
【野球】「野村監督は難しいサインをいっぱい出す」大学准教授になった元楽天・西谷尚徳氏 プロ初のお立ち台を呼び込んだプレーを回想
【野球】球団初の二刀流 DeNA・武田の育成プランとは 試行錯誤を重ねて挑戦中 新たな道を切り開く球団ポリシー
【野球】楽天ドラフト1期生は現在、大学准教授に 西谷尚徳氏「傍観者」だったドラフトで一場靖弘投手と再び同僚に