【野球】歓声も鳴り物もヤジもない 阪神・糸井も「異様な雰囲気」取り戻したい光景

 ウグイス嬢のアナウンスに続き、各選手の登場曲が流れる。試合前や七回などには、チアガールも登場した。

 打った、投げたの真剣勝負も熱を帯びる。ただ、そこにいつもあるはずの“光景”がない。鳴り物が響き、歓声が銀傘にこだまする。時には痛烈なヤジも飛ぶ。無観客試合。やはり寂しさ、物足りなさは拭えなかった。

 6日、甲子園球場で今年初めて開催された日本ハムとのオープン戦。新型肺炎の影響を考慮され、プロ野球は無観客試合が続く。同戦で1番に入った糸井嘉男外野手は3日、今年2度目の実戦出場を前に、まだ明るく意気込みを語っていた。

 「(観客が)いるイメージでやります。ヤジられているイメージで!!」

 試合では2打席に立ち、守備にも就いた。安打こそなかったが、打席内容も上々。だが、試合後は少し神妙な表情だった。「異様な雰囲気。変な感じがしました」。シーズンに入れば1試合、5万人近くの観客で埋まるマンモス球場だ。プロ17年目のベテランが「異様」と表現するほど、いまだかつて経験のない状況下で開幕を迎えようとしている。

 全国各地で大規模なイベントは中止、延期され、スポーツ界も決断を迫られている。ラグビーのトップリーグや、サッカーのJリーグ、バスケットボールのBリーグなどが試合を延期。ゴルフトーナメントも中止が目立つ。大相撲の春場所は無観客での開催を決定。高校野球のセンバツ大会は、無観客での開催、もしくは中止を視野に、今月11日に最終結論を出す方針だ。

 プロ野球は現状、3月20日の開幕に向け、粛々と準備を進めている。今後の情勢は不透明だ。強行、延期、無観客…いずれにせよ、賛否は出るものだろう。

 ただ、あらためていま、痛感する。プロ野球はエンターテインメントである。舞台に観客は欠かせない。ただ面白いプレーだけを求めているわけではない。真剣勝負がファンの心を熱狂させ、日本最高峰のプレーが少年少女の夢になる。また、そんな視線、声援が選手の原動力にもなる。矢野燿大監督も言う。

 「早くファンの人が入ってほしい。こっちもファンの人に乗せてもらう部分もあるしね。その中で、いいものを見せたいっていいうのもあるしね。ここで大きな声援をもらいながらやりたかった」

 当たり前な日常の尊さを感じる日々だ。新助っ人のジャスティン・ボーア内野手が「たくさんのファンに埋め尽くされたスタンドを、想像しながら楽しみにしてプレーしたよ」と話せば、同じくジェリー・サンズ外野手は「歴史ある球場。たくさんのファンの前で試合できれば、もっともっと楽しいと思う」と想像を膨らませ、来るべき日常に胸を躍らせる。

 開幕まで残り2週間。一日も早い騒動の終息を願う。

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