大相撲 優勝争いのカギはマスク対策?支度部屋で悪戦苦闘の力士も

 “マスク場所”とも言える厳戒態勢の大相撲7月場所が19日、東京・両国国技館で幕を開けた。半年ぶり観客を動員するにあたり日本相撲協会がまとめた「新型コロナウイルス感染症対応ガイドライン」は33ページにも及ぶ。中でもマスクに関する記述は詳細、厳重だ。

 日常生活における感染予防の項目ではまず、「(力士ら)協会員は常時、マスクを着用して外さないことを徹底」とある。さらに「マスクを外す際は表面には触れずに紐(ひも)を持って外し、ビニール袋に入れてゴミ箱に捨てる」と、外し方まで徹底している。

 まげを結う時は力士も床山もマスクは絶対。そして「耳の回りを整える時には、(マスク)本体を口に当てたまま、両手で紐を持って浮かせ、その間に整える」と隙はない。

 国技館内では観客も報道陣もマスクは絶対。相撲を取る力士、審判、行司ら土俵回り以外では全員がマスクを着けている。

 マスクが興行の行方を左右する。東京開催場所の責任者、尾車事業部長(元大関琴風)は「今回はマスクをしてることによって、濃厚接触者というものにならないというのが一番大きくて(新型コロナに)なった時に濃厚接触者にみなされると力士も休場しなくちゃいけなくなるから。このマスクでそういうものが回避されるなら、マスクをして頑張ってくれと」と説明する。

 無観客で行った3月の春場所は協会員に1人でも感染者が出れば、場所は打ち切りだったが、今回は即、中止とはならない。感染拡大を抑え、感染者が出ても場所続行を可能にするため、これが“コロナルール”なのだ。

 「命がけの場所。協会は彼ら(力士)の命だとか休場を回避させるだとか、大きな意味を持ってやっていることだから、分かってくれよ」。千秋楽まで角界一丸となり、土俵上でも土俵外でも戦い抜くしかない。

 力士に一番、違和感を抱かせるのが支度部屋でマスク着用のまま、準備運動をすることだろう。

 元幕内の人気業師、幕下宇良(木瀬)は「息苦しい。汗をかいてくるとマスクもぬれてきた」と、夏場には大変。アップを入念にするタイプは慣れるのに時間がかかりそう。幕内琴勇輝(佐渡ケ嶽)は「なじめない部分はある。マスクしながらの運動はきつい。(運動量を)調整している」と悪戦苦闘する。

 鶴竜(陸奥)の休場で一人横綱となった白鵬(宮城野)は初日、「マスクが(汗で)ぬれてしまうから大変。でもマスクを替えていると集中できない」と苦心していた。

 幕内最小兵の炎鵬(宮城野)は「動き過ぎると体力を削られるので、いつもより抑え気味にしている」と温存策。新大関朝乃山(高砂)は「みんな同じ条件。早く慣れるようにしたい」と大きな影響は感じていない。

 全員が初体験の“新様式”。優勝争いは対応力がカギを握る。(デイリースポーツ・荒木 司)

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