【荒木正医師】肺炎球菌ワクチン予防接種は受けるべき
【Q】地域の自治体から肺炎球菌ワクチンの予防接種に関する案内が来ました。受けた方がいいのでしょうか。(60代男性)
【A】肺炎は日本人の死因の中で、がん・心疾患に続き3番目に多い病気で、亡くなる方は年間約12万人にも達します。どんなに元気な高齢者の方でも加齢とともに免疫力が低下し、肺炎にかかる可能性が高くなるため、死亡する方の約97%が65歳以上となっています。
また、糖尿病、心疾患、呼吸器疾患、腎不全などの慢性疾患をお持ちの方や、他の疾患の治療により免疫力が低下している方、たばこを吸っている方などは、健康な方よりもさらに肺炎にかかりやすく、重症化しやすい傾向にあります。
肺炎の原因は細菌やウイルスなどが、体に入り込んで感染症を起こすことに由来しますが、その原因菌で最も多いのが肺炎球菌です。肺炎球菌は主に小児の鼻やのどに住み着き、咳(せき)やくしゃみによって周囲に飛び散り、それを吸い込んだ人から人へと順次広がって感染していきます。
肺炎球菌による肺炎は成人肺炎の25~40%を占めますが、肺炎球菌ワクチンの接種により肺炎を予防し、重症化を防ぎます。肺炎球菌には93種類の血清型があり、2014年10月からの定期接種で使用される「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」は、肺炎球菌感染症の約7割を占める23種類の血清型に効果があるとされています。
予防接種は1年を通して、いつでも可能で、再接種を希望される場合は、5年以上の間隔を空けることになっており、接種してから約3週間で抗体(免疫)ができるとされています。65歳未満でも希望により接種可能ですが、定期接種は65歳以上の方、または60歳以上65歳未満で心臓や呼吸器疾患などの持病のある方が対象です。
また冬になると流行するインフルエンザにかかることで免疫力や抵抗力が弱まると、肺炎を併発しやすくなります。肺炎球菌ワクチンの単独接種だけではなく、インフルエンザワクチンとの同時接種も非常に有効とされています。
◆荒木 正(あらき・ただし)03年、東邦大学医学部卒。東邦大学医療センター大橋病院などに勤務後、16年に東京都江東区に亀戸内科クリニック開設。循環器・糖尿病内科医として地域に密着。総合内科専門医。循環器専門医。
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