【櫻井直樹医師】帯状疱疹の軽視はダメ 悪化すれば点滴治療なども
【Q】右胸から背中にかけて急に痛くなり整形外科を受診したら、肋間神経痛と言われ湿布を処方されました。貼って3日して赤く水ぶくれができたので皮膚科を受診したところ、帯状疱疹(たいじょうほうしん)と診断されました。どんな病気なのですかか?(50代男性)
【A】実はこのパターンで皮膚科を受診されるケースが非常に多いのが、帯状疱疹です。水痘・帯状疱疹ウイルスの初感染では水痘(みずぼうそう)になりますが、治った後も神経節内にウイルスが潜伏し、風邪・疲れや悪性腫瘍など免疫低下によりウイルスが再活性化して発症するのが帯状疱疹です。
ウイルスが再活性化されると神経節内で増殖し、神経を通って皮膚に達し、そこで更に増殖して赤いぶつぶつや水疱(すいほう)が神経の走行に沿って帯状に出現します。そのため、神経が障害され神経痛を伴い、発疹が治った後も後遺症として神経痛を残す(帯状疱疹後神経痛)ことがあります。
相談者の方のように、神経痛が先行することもよくありますが、その時点では帯状疱疹と診断はできず、発疹が出現して初めて帯状疱疹と診断が可能となります。血液検査では診断が不可能です。
毛虫皮膚炎やかぶれなどと鑑別が必要となることがあり、水疱部の顕微鏡検査を行うこともあります。帯状疱疹が帯状疱疹として他人に感染することはありませんが、水痘にかかったことのない人には、水痘として接触感染し得るので注意が必要です。
治療は基本的に抗ウイルス剤の内服を行いますが、発疹が広範囲・痛みが非常に強い・運動神経障害などの合併症を伴う等のケースでは入院して点滴治療が必要となります。帯状疱疹後神経痛の治療としては、各種内服薬を用いますが、治療に難渋することも多く、ペインクリニックでのブロック注射が必要となることもあります。
また、特に50代以上の方は、水痘ワクチンをあらかじめ接種すれば、そもそも帯状疱疹にかかりにくくなり、帯状疱疹後神経痛が残存するリスクも大幅に低下します。
◆櫻井直樹(さくらい・なおき)02年、東大医学部卒。東大付属病院、関連病院に勤務後、美容外科クリニック勤務を経て千葉県松戸市にシャルムクリニック開設、他院皮膚科顧問も歴任。皮膚科専門医、レーザー専門医。