【中塚美智子医師】気を付けたい子どもの指しゃぶり…続くようなら歯並びやかみ合わせ、発音に影響も

 昔、指にわさびやからしを塗って止めさせようとしたこともあった子どもの指しゃぶり。赤ちゃんにとっての指しゃぶりは母乳やミルクを吸う練習や、口で刺激を受け取る感覚の発達などに関わっていて、大きな意味を持ちます。しかし、3歳を過ぎてもまだしている場合、歯並びなどへの影響も考えた方がよさそうです。

 指をしゃぶることで、歯は唇側に押されます。そのため歯が飛び出したり、上顎の真ん中にある2本の歯と歯の間に隙間ができたりします。さらにその隙間が気になり、隙間に舌を挟むといった新たな癖が出る場合もあります。

上下の奥歯はかんでいるのに上下の前歯はかまず、常に口が少し開いているようにみえる開咬(=かいこう)も、指しゃぶりと関連があります。爪や鉛筆などをかむ、舌で常に歯を押す、口で呼吸するといった習慣がある場合にも開咬になる可能性が。開咬は口の中が乾燥しやすく、細菌が洗い流されないために虫歯になりやすい、食べ物がかみにくい、飲み込みや発音の際に舌がうまく使えないなどといったことにもつながるため、気を付けたいですね。

 歯は基本的にアーチ型に並んでいますが、そのアーチの内側に舌、外側に唇と頬があるので、歯は筋肉に挟まれた形で生えています。歯が唇側に飛び出したり、開咬になったりしていると、その状態でこれらの筋肉の力のバランスが取れていることになります。そのため、治療として唇、頬、舌など歯並びに影響を及ぼす筋肉を正しく使えるようにするとともに、適切な歯の位置で筋肉の力のバランスを取ることを目的とした口腔筋機能療法(MFT)が行われます。癖を直すのはなかなか難しいですが、子どもの場合は癖が直らないと怒ったり、わさびやからしを登場させたりするより「さすが!お兄ちゃんになったね!」、「すごい!指が喜んでるよ!」と、本人のがんばりを認め、ほめてあげましょう。

 ただし、歯並びは歯や顎の骨の大きさ、歯の本数、遺伝などにも大きく影響されます。まずは歯科医師の診察を受けてください。

◆中塚美智子 大阪歯科大学医療保健学部准教授。歯科医師、労働衛生コンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士。

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