【谷光利昭医師】寒い冬なのに「氷たべたいねん」…不思議な症状の正体は
「先生、最近やたらと氷たべたいねん」。寒い冬なのに氷が食べたくて仕方がない女性がいました。常連の患者さんで「氷が食べたくなる」という症状が出現すると来院されます。外国の違うケースでは、土を食べる人もおられるようです。
どんな状態の患者さんがこうなるのでしょうか?答えは「貧血」です。正確に言いますと、貧血とは病名ではありません。血液中のHb濃度、赤血球数が正常値以下に減少している状態を示します。いわゆる病名ではなく、病態なのです。貧血の病態生理としては(1)失血(2)赤血球破壊の亢進(3)赤血球生成の材料不足(4)赤血球生成過程の障害などがあります。貧血は、小球性低色素性、正球性正色素性、大球性高色素性の三群に分類されます。
小球性低色素性で最も頻度が多いのが、鉄欠乏性貧血です。原因として多いのは、月経過多です。ですから、この病気は女性に多く認められます。男性の原因で多いのは、痔や胃潰瘍からの出血です。女性は、周期的に月経が来るために慢性的に貧血状態になっている人が多くみられ、貧血という状態に対して強い抵抗力を持っています。しかし、この状態を放置すると心臓に負担がかかり、将来的に心不全を来すことがあります。無症状であっても治療をすることが推奨されています。治療は鉄剤の投与です。
低色素性でも血清鉄が低下せず上昇する場合は、鉄芽球性貧血やサラセミアという特殊な病気を鑑別しなければなりません。鉄芽球性貧血には、ビタミンの投与、サラセミアには脾摘等が施行されます。正球性正色素性では鑑別疾患が多く、溶血亢進の有無を調べて、再生不良性貧血、白血病、癌に伴う貧血など調べなければなりません。
その他の原因として、慢性腎不全、内分泌疾患、慢性感染症、膠原(こうげん)病、肝硬変などがあげられます。治療としては、原疾患の治療が優先されます。大球性高色素性に属した場合は、ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、胃癌術後、甲状腺機能低下症などを考えなければいけません。治療は、欠如物質の投与です。このように貧血には様々な状態があり、軽視してはいけません。慎重に治療を行うことが必要です。
◆筆者プロフィール 谷光利昭(たにみつ・としあき)たにみつ内科院長。93年大阪医科大卒、外科医として三井記念病院、栃木県立がんセンターなどで勤務。06年に兵庫県伊丹市で「たにみつ内科」を開院。地域のホームドクターとして奮闘中。
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